カルチャー
【サイジョの本棚・打ち合わせ編】

A.B.C-Z・戸塚祥太の愛読書『人間』読んでみたら、ジャニーズJr.時代の“坊主”姿を思い出したワケ

2022/07/31 11:00
保田夏子

編集・B子 さて、『人間』を読んだとっつーにおすすめの本を教えてほしいんだけど、読書家なのに、女性作家の名前を挙げることが少ない気がするんだよね。

ライター・保田 それなら、劇作家でもある本谷有希子の初期作『腑抜けども、悲しみの愛を見せろ』(講談社)をおすすめしたい。「自分には唯一無二の演技の才能がある」っていう強烈な自意識を持っている俳優志望の女性が、登場人物を振り回す中編小説。笑ってしまうくらい強めに戯画化されてるから、読み心地は『人間』とはかなり違うんだけどね。

編集・B子 もともと舞台作品で、2007年には佐藤江梨子、永瀬正敏、永作博美ら出演で映画化もされてるんだ。どんな話なの?

ライター・保田 俳優を目指して上京していた澄伽(すみか)が、両親の死を機に田舎に帰省することから始まる。両親の死に全く悲しむ様子のない澄伽と、彼女に異様におびえる妹の清深(きよみ)、寡黙だけど妻に対して横暴な兄・宍道(しんじ)、彼に献身的に従う愚鈍な妻・待子(まちこ)……っていう4人が、普通の日常を続けながら感情をもつれさせて、非日常にたどり着いてしまう話。じめっとしているようで、最終的に突き抜けた爽快感を感じられるよ。

編集・B子 「自分には唯一無二の演技の才能がある」と思っている澄伽って、そのまんま『人間』の永山みたい。

ライター・保田 そうなのよ。で、その「自分は特別である」という強烈な自意識がもろく崩れる様子や、表現衝動と人間性を天秤にかけていいと思っている澄伽の危うさは、『人間』が響いた人なら間違いなく楽しめるはず。情景一つひとつのコントラストが鮮やかで、日常生活が舞台なのに幻想的な光景が浮かび上がるのも、『腑抜けども』の魅力だと思う。

編集・B子 てか、とっつーは本谷作品自体が好きそうだな(笑)。「劇団、本谷有希子」からのオファー、待ってます!

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