オンナ万引きGメン日誌

万引きGメン衝撃! 「玄米泥棒」主婦の犯行を暴露したまさかの人物とは?

2022/07/23 16:00
澄江(保安員)

スーパーの会計をすり抜け、堂々と持ち去る女

 さまざまな状況から犯行を予測し、満を持して依頼されたことを知って、失敗が許されない事態に追い込まれていることに気がつきました。店内の状況をいえば、店が狭く、棚も低いため、ひとつ間違えれば存在に気づかれる状況にあります。

 今回の目的は、玄米泥棒の摘発。今日1日、玄米に集中すると決めた私は、売場に出ることなく、事務所の中からモニター監視する了解を取り付けました。おそらくは、20年くらい前の防犯システムでしょうか。カメラの性能は悪く、解像度の低いモニターを使用しているため、ひどく目が疲れますが、玄米に手を付ける人がいれば、すぐにわかる状況です。

 午後4時40分頃。すっかり飽きてしまい、眠い目をこすりながらモニター監視を続けていると、派手なグリーンのワンピースを着たショートカットの女性が、陳列される玄米袋の脇にカートを横付けしました。そっと売場に入って、客の振りをしながら様子を窺います。すると、どことなく若い頃の三原じゅん子さんに似ている雰囲気を有する小柄の女性は、その場にしゃがんで両手で玄米袋を抱きかかえました。

 30キロの商品なので一気には持ち去ることはできず、少し持ち上げてから横にスライドさせるという動きを繰り返して、カート下段に載せるべく奮闘しています。店員を呼んで助けを求めれば、すぐに済む話ですが、周りを見ても姿はないので、自分の手で載せることに不自然さはありません。でも、30キロの玄米と女性のイメージが合わず、犯行に至る気配も感じます。それからまもなくカゴを手に取り、カート上段に載せた女性は、そのまま屋内の売場に入っていきました。

 重そうにカートを取り回しながら、もやしとキャベツ、それに複数の冷凍食品をカゴに入れた女性は、素早く買い回りを終えてレジ列に並びます。玄米の精算を見届けるべく注視すると、カート上段のカゴにある商品の精算を終えた女性は、下段にある玄米の精算はしないまま外に出ていきました。


 お会計で2,000円ほどしか出していないので、玄米袋の支払いを済ませていないのは明らかです。特に挙動も見せずに、堂々と店を出ていく女に、そっと近づいて声をかけました。

「お店の者です。お客さん、その玄米なんですけど、お支払されていませんよ」
「へ? 私、レジ通りましたけど」
「通って精算したのは、上のカゴだけでした。事務所でお支払いいただいてもらっていいですか」
「ああ、そうでしたね。ごめんなさい……」

 否定を続けることなく、すぐに犯行を認めて同行に応じてくれたので、拍子抜けした思いで事務所に向かいます。古めかしい扉のノブを廻して、事務所のなかに入ると、社長兼店長が腕を組んで待ち受けていました。私が売場で追尾していることに気づいて、到着を待っていたそうです。

万引き 犯人像からみえる社会の陰