新堂冬樹氏インタビュー 『虹の橋からきた犬』でペットロスからの希望を描く
『ハチ公物語』――。言わずと知れた、秋田犬のハチが、亡くなった主人の帰りを渋谷駅前で待ち続けたという実話だ。主人の死から10年が経った1935年にハチは渋谷駅付近で亡くなった。ハチは今でもハチ公像として駅前で主人を待ち続け、多くの人に愛されている。
犬と人間の物語は『ハチ公物語』のみならず、『南極物語』や犬の十戒をもとにした『犬と私の10の約束』など数多くある。そのどれもが涙なしでは観ることのできない作品だ。
そんな犬と人間の物語において、新たな感動作が生まれた。新堂冬樹の『虹の橋からきた犬』(集英社文庫)だ。新堂冬樹氏はもともとメフィスト賞受賞作『血塗られた神話』(講談社文庫)で文壇デビューを果たし、『カリスマ』(幻冬舎文庫)や『溝鼠』(徳間文庫)などのハードボイルドなノアール小説で高い人気を得たベストセラー作家だ。
しかしその一方で『瞳の犬』(角川文庫)や『168時間の奇跡』(中央公論新社)、そして『忘れ雪』(角川文庫)など犬に関係する泣ける小説でも大ヒットを飛ばしている。新堂冬樹氏には自身が大の愛犬家という一面があり、新作の『虹の橋からきた犬』は彼の実体験も含まれた物語となっている。
帯の文言にある「ペットロスからの希望を描く小説」とあり、愛犬家のみならず愛猫家、ないしは動物愛好者全てに、涙を催させる内容となっていそうだ。
そんな新堂冬樹氏に作品についてと動物と一緒に生きることについて、早速いぬねこプラス編集部はインタビューを敢行してきた。
<以下、インタビュー本文>
『虹の橋からきた犬』執筆動機はペットロス
――今作は発売前からAmazonでランキング入りするなど業界でも話題作となりましたが、執筆の動機はなんだったのでしょうか。
新堂冬樹氏(以下、新堂) 僕は3年前までスコティッシュテリアのブレットという名の犬を飼っていたんです。9年間も一緒にいたんですよ。まさにソウルメイトでした。でも悪性リンパ腫で亡くなってしまったんです。
心にポッカリ穴が空いたようで……いわゆるペットロスに陥りました。
――9年も連れ添った愛犬との別れ……それは大変辛かったでしょうね。私も猫を飼っているので気持ちは痛いほど分かります。
新堂 今までずっとそばにいたのに、姿がないんですよ。ケージもあって、一緒に過ごした記憶もあるのにどこにもいない。信じられなくて仕事も手に付かないし、ずっとぼーっとしちゃうし……本当に苦しかったです。そんな時、霊視ができる先生と知り合ったんですよ。
――霊視……というと言葉が悪いかもですが、スピリチュアルやオカルト的な?
新堂 はい。信じるか信じないかはさておき、その先生に色々と話を聞かせてもらい、救われたんです。
――どんな話だったのですか?
新堂 犬というのは人間の病気や運勢的に悪いものを取り除く不思議な力を持っていて、ご主人様のそれらを自ら被り、虹の橋を渡る(※天国へ行くこと)そうなんですよ。悪いものを背負って行くからなんかひどいことにも聞こえてしまうのだけれど、犬からすればそれが当然で、ある意味任務でもあるんです。だから悪いことでもなんでもないらしいんです。
――ちょっとオカルト的な話ではありますが、犬の人間に対する従順さを考えると、どこか納得できる話ですね。でも人間の悪いものを取り除くのが任務とはいえ、やっぱりいなくなってしまうのは悲しいですよね。
新堂 ところがね、生前に心から慕った主人だった場合、すぐに虹の橋を渡ることなく待っていてくれるらしいんです。そこで主人を見守ってくれているんですって。だから実は側にいるんです。魂になったからこそ、すぐに戻ってきてくれもするんですよ。
――姿が見えなくても見守ってくれているなんて泣けてきます……。
新堂 もちろんスピリチュアルな話になるので信じる信じないはあるのですが、その話を聞いて僕はブレットを失った気持ちが救われました。だから動物の魂は死んだらおしまいじゃないんだよ、そばにいてくれるんだよってことをみんなに知ってほしかったんです。
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