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ドラマ俳優クロニクル
織田裕二、『踊る大捜査線』随一の名場面で見せた魅力――シリアスとコメディを同時にこなす姿に期待すること
2022/05/24 20:00
続く第7話。岩瀬とつながりのある女性の職場を知った青島は、営業マンの振りをしてその女性に会いに行く。偽名と嘘の商談目的を理由にしてスルスルと社内に入り、社員から女性の素行を聞き出していくさまは実に軽妙で、刑事というよりは詐欺師のようだであった。この6~7話で、青島のキャラクターは完成したといえるだろう。
違法スレスレの捜査を飄々と行う一方で、事件の被害者に優しく寄り添う親しみやすさがあり、自分なりの正義を貫こうとする青島は、正義のヒーローでなくても、新しい時代のヒーローだったのだ。
また、『踊る』はアニメやインターネットといった、当時はまだ社会の偏見が強かったオタク的なものを、当たり前の文化として受け止めている姿も印象的だ。当時視聴していて、自分と地続きの世界を生きている青年が、テレビの中にいると感じられた。この地続き感があったからこそ、『踊る』と織田は多くの視聴者に受け入れられたのだろう。
現在、織田は54歳。近年はエリート弁護士を演じた『SUITS/スーツ』(2018年&20年、フジテレビ系)や、銀行の頭取を演じた『監査役 野崎修平』(20年、WOWOW)といった社会的立場の高いシリアスな役が続いており、青島のような親しみやすいキャラクターを演じる機会はなくなっている。昔と同じものを求めるつもりはないが、今の織田だからこそできる新しい庶民派ヒーローを、いつか演じてほしいものである。
(成馬零一)
最終更新:2022/05/24 20:00