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『ザ・ノンフィクション』レビュー
『ザ・ノンフィクション』現実を知らなかった40代の息子「ワケあり人生と部屋探し ~無理とは言わない不動産屋~」
2022/05/09 17:08
食事のときも背筋がピンと伸びていて、きれいにヘアメイクをした小川は「おばあさん」ではなく「マダム」だった。日本で暮らしていたら、なかなかこんな80代にはなれないだろうと、美の国、大人の国である「フランスの力」を感じた。
小川が一人暮らす家も、額縁に飾られた絵がそこかしこに並び、一方で生活感を感じさせる日用品は見えるところには置いておらず、美意識の高さをうかがわせるものだった。
そんな小川の佇まいや暮らしぶりは只者ではないが、何より79歳で暮らしを変えようと思った決断がすごい。その年齢で、一緒に暮らす娘と折り合いがつかない場合は「時々誰かに愚痴を言ったり、ガス抜きをしながらやり過ごす」ことを選ぶ人が多いように思う。もちろん、関係の悪さの程度もあるのだが、やり過ごす以外の選択もあるのだ。小川にはよりよく生きていたいという凛々しさがあって、見ていて背筋が伸びた。
次週は「NYフェスティバル2022受賞記念 ボクと父ちゃんの記憶」。若年性アルツハイマーの父とその家族の別れを見つめた同作は21年10月に放送され、その後国際メディアコンクール・ニューヨークフェスティバルのドキュメンタリー・普遍的関心部門で銅賞を受賞した。次週は同作と、家族のその後について伝える。
最終更新:2022/05/09 17:08