『ザ・ノンフィクション』レビュー

『ザ・ノンフィクション』現実を知らなかった40代の息子「ワケあり人生と部屋探し ~無理とは言わない不動産屋~」

2022/05/09 17:08
石徹白未亜(ライター)

『ザ・ノンフィクション』現実を知らなかった40代の息子

 庭付き平屋に長年過ごしていた親子の家探しは、息子のこだわりが強いようで難航していた。しかし、番組後半で息子自身が不動産会社に連絡し、生活保護の受給者かつ精神疾患のある借主だとほぼ紹介できない、という厳しい現実を身をもって知ったことで急展開していったように見えた。

 家探しはよほどの金持ちでない限り、(1)理想の家を思い描く(2)理想と払える家賃のギャップに落胆する(3)理想と家賃をすり合わせる、といった過程を踏む。おそらくこの息子は、家探しが初めてだと思われ、理想と現実のギャップを認識してなかったので、長く迷い続けたのではないだろうか。

 最初から息子自身にも家探しをお願いしていたほうが、早めに「現実はかなり厳しい」ことを知れて、齋藤も半年もかけずに済んだのではないかと思った。齋藤の仕事は苦労が多い割に金銭的なメリットは期待できないことは想像がつくので、せめてストレスをためないでほしい。

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 さまざまな境遇にある老若男女が出てきた良回だったが、特に印象深かったのが82歳の女性、小川だ。フランスで娘と暮らしていた小川は、娘と折り合いがうまくいかず、3年前にテレビで齋藤の活動を知ったことで、家探しをお願いしたいとエアメールを送る。

 現在は齋藤の用意した横浜の部屋に暮らしながら、齋藤の会社で清掃の仕事を行い、一人暮らしをしている。


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