コラム
老いゆく親と、どう向き合う?
母がエンディングノートに書き残していた「望み」とは? 母親を看取った30代女性の胸中
2022/05/15 18:00
「兄には、葬儀に来る来ないは自由だと伝えました。長男なので、喪主なのが普通ですが、うちは普通ではないので(笑)」
結局、兄は葬儀のはじまる10分前にフラッと現れた。
「従兄弟や友人からは、『お兄さん、やっぱり変わってるね』とビックリされましたが、恥ずかしいとか、兄妹仲良くしなければいけないなどというプレッシャーはなくなっていたので、これも全然許容範囲です。これが兄のキャラなんだ。兄が悪いのでも、周りが悪いのでもないと素直に思える。兄には期待しない。やってくれたらラッキーと思えるので楽ですよ」
博之さんには従兄弟から絵を使って葬儀参列の意思を確認してもらったが、「わかんない」と言ったので、参列を見送ることにした。
その後、博之さんはホームの晃子さんがいた部屋を1日1回は覗きに行っていたという。
「でも、落ち着いているしご飯も食べているようです。週1回はオンライン面会していますが、変わりない状態です」
これから博之さんをどうするか、中村さんはまた別のホームに転居させることも考えている。
「今、父には楽しみとか人生の喜びと言えるものがほぼありません。これまで自分のお金で好きなことをやっていた人が、一人で散歩にも買い物にも行けない。不自由なことは、父にとって苦痛だろうと思います。体力も心配です。父はまだ69歳。食事のときしか立たない生活は健康的とは言えません。体を動かせばまだ体力は回復するんじゃないかと思うんです」