サイゾーウーマンコラムケアマネは見た! 50代の娘が引きこもりに……富裕層の暮らしから一転、エリート家族の闇【前編】 コラム 老いゆく親と、どう向き合う? ケアマネは見た! 50代の娘が引きこもりに……富裕層の暮らしから一転、エリート家族の闇【前編】 2022/02/06 18:00 坂口鈴香(ライター) 老いゆく親と、どう向き合う? 写真ACより “「ヨロヨロ」と生き、「ドタリ」と倒れ、誰かの世話になって生き続ける” ――『百まで生きる覚悟』春日キスヨ(光文社) そんな「ヨロヨロ・ドタリ」期を迎えた老親と、家族はどう向き合っていくのか考えるシリーズ。 家族をまるごとケアする 野中瑛子さん(仮名・52)はスゴ腕ケアマネジャーだ。自称でない証拠に、他のケアマネジャーでは手に負えなくなった“困難ケース”と言われる難しい利用者の担当が回ってくることが多い。 手に負えないのは、高齢者本人だけではない。 「ご本人だけならまだ何とでもなります。利用者さんを取り巻く親族に問題があって、進んでいた話を妨害してめちゃくちゃにされることも少なくありません。こうなるとケアマネがケアしなければならないのは家族全体ということになってきます。はっきり言って、安いお給料ではとても見合わないと思うことも多いです。もっと良い条件の事業所に移ろうと思っても、今担当している利用者さんを見捨てるようで、それもなかなか難しい。担当している方が皆施設に入られたり、お亡くなりになったりすれば――というのも申し訳ないですが、それが現実なんです――キリがいいんでしょうが、またすぐに次の担当の方が決まってしまうし」 野中さんの話は止まらない。愚痴を言っているようでも、責任感の強さは伝わってくる。これが周りから頼られている理由なのだろうと思う。 50代の娘が引きこもりに 多くの高齢者とその家族を見てきた野中さんだが、最近特に大変だった家族があるという。 松原種子さん(仮名・83)と清さん(仮名・85)夫婦だ。いわゆるエリート一家で、清さんは一流企業の取締役まで務めた。種子さんも大卒で、都心の邸宅に住み、夫婦で音楽会や絵画の展覧会を楽しんでいた。海外生活も長く、娘2人はともに留学し、姉は欧州で、妹の小百合さん(仮名・52)は北米で仕事をしている。 絵に描いたようなエリート富裕層の暮らしが一転したのは数年前、小百合さんの仕事がうまくいかなくなり、抑うつ状態がひどくなって帰国したのがきっかけだった。 「帰国後、小百合さんは統合失調症と診断されて、実家に引きこもるようになったようです。その前からご主人の清さんにも認知症の症状がみられるようになっていました。清さんも小百合さんも家族以外の人間を拒否されて、種子さんの負担が大きくなったんです」 小百合さんの症状は急激に悪化した。北米でも入院した経験があったが、病室を抜け出してしまい、治療が中断されたことで一気に症状が重くなったようだ。帰国後、精神科を受診したものの、処方された薬を大量に飲んだり、種子さんに暴力をふるったりするようになった。 次のページ 壮絶な「8050」 12次のページ 楽天 小説8050 関連記事 「義弟から聞いてゾッとした」認知症の母の介護を妹夫婦に任せた兄、背筋が凍ったと話す事情「女ってコワいね」妹に認知症の親を任せた兄、「たった半年でホームなんて」と話すわけ嫁はフィリピン人。「ダイジョーブよ、母ちゃん」認知症の義母の失敗も笑い飛ばす、まるでコメディアン仲良し姉妹の「3世帯同居」、母の介護も「妹と協力していけば大丈夫」と思っていたが……「わが母ながら立派」と思っていたが……同居する弟夫婦は「他人以下」、父の介護に一人で取り組む心情は聞くに聞けない