90~2020年のジャニドラ系譜

ジャニーズドラマにおける、堂本剛『金田一少年の事件簿』という記念碑――なにわ男子・大西流星『夢中さ、きみに。』に見る新時代

2022/05/01 13:00
成馬零一

『俺の家の話』で終わった一つの時代

 宮藤のドラマに登場する男の子たちは、性欲や暴力性を内に秘めた等身大の存在で、アイドルが演じるには生々しかった。しかし、ジャニーズ事務所は宮藤の男臭いドラマに、所属アイドルを積極的に起用し、彼らは宮藤のドラマに出演して切磋琢磨することで俳優として成長していった。

 その筆頭は、やはりTOKIOの長瀬智也だろう。

 長瀬は00年の『池袋』以降、クドカンドラマの初期集大成と言える落語を題材にした05年の『タイガー&ドラゴン』(TBS系)、向田邦子賞を受賞した10年の『うぬぼれ刑事』(同)に出演。ドラマ脚本家としての宮藤は、長瀬と共に成長してきたと言える。そして今年の冬クールに作られたドラマ『俺の家の話』(同)は宮藤と長瀬にとって集大成と言える作品だった。

 長瀬が演じたのはピークを過ぎた42歳のプロレスラー・観山寿一。車椅子生活となった父親の介護と、家業の能楽師を継ぐために寿一が実家に戻る物語は、3月でジャニーズ事務所を退所する長瀬のバックボーンが強く反映された作品で、プロレスラーをアイドルに置き換えて見れば、そのまま長瀬の物語だったと言えるだろう。

 寿一が、父を看取り能楽師として家業を継ぐのではなく、突然、命を落とし、家族を見守る守護霊のような存在となってしまう結末は、視聴者に衝撃を与えた。自分を顧みずに家族のために生きた末に、永遠の存在となる寿一の姿は、ジャニーズアイドルと長瀬の姿を寓話的に描いていたように、筆者には見えた。


 ともあれ、『俺の家の話』は宮藤とジャニーズアイドルが積み上げてきた歴史の到達点であると同時に、一つの時代の終わりを告げるものだった。

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