サイゾーウーマン芸能テレビドラマレビュー『金田一』で始まったジャニドラの今後 芸能 90~2020年のジャニドラ系譜 ジャニーズドラマにおける、堂本剛『金田一少年の事件簿』という記念碑――なにわ男子・大西流星『夢中さ、きみに。』に見る新時代 2022/05/01 13:00 成馬零一 ジャニーズドラマレビュー 4月24日からスタートした『金田一少年の事件簿』(日本テレビ系)。主演はなにわ男子の道枝駿佑が務めている。ジャニーズで歴代5人目にあたる「金田一一」を演じる道枝には、放送前から注目と期待が集まっていたものの、初回放送は7.8%(ビデオリサーチ調べ、関東地区)と1ケタスタート。 放送後は、初代金田一一を演じたKinKi Kids・堂本剛と比較する感想がネット上に続出し、同作の人気の高さがあらためて明らかになった。放送から27年の月日がたってもジャニーズファンに鮮烈な印象を残している初代『金田一少年の事件簿』。それはジャニーズドラマにとっても重要な意味を持つというのは、ドラマ評論家の成馬零一氏。サイゾーウーマンで昨年公開した記事を、あらためて公開する。 ******** 1990年から2020年までのテレビドラマの歴史について、3人の脚本家を軸にまとめた一冊、『テレビドラマクロニクル1990→2020』(PLANETS)。その刊行にあたって、著者の成馬零一氏に同時代のジャニーズドラマの変遷について書き下ろしてもらった。『金田一少年の事件簿』から始まったというジャニーズアイドルドラマは、今後ドラマ界でどんな道を歩むのだろうか? 『テレビドラマクロニクル1990→2020』(PLANETS) 『人間・失格』『未成年』野島伸司作品におけるジャニーズの役割 拙著『テレビドラマクロニクル1990→2020』は、野島伸司、堤幸彦、宮藤官九郎の作品を通してテレビドラマの歴史を綴った年代記(クロニクル)だが、彼らの作品を時系列順に追いかけていくと、ジャニーズ事務所のアイドルたち(以下、ジャニーズアイドル)がいかに重要な役割を果たしていたかを実感し、改めて驚いた。 たとえば、1994年に発表された野島伸司脚本の学園ドラマ『人間・失格~たとえばぼくが死んだら』(TBS系、以下『人間・失格』)にはKinKi Kidsの堂本剛と堂本光一が出演している。 本作は、いじめを苦に自殺した息子の父親が、息子を死に追いやった教師や生徒たちに復讐する悲劇を描いた作品だった。堂本剛はいじめを苦に自殺した中学生・大場誠を演じ、堂本光一は誠に対して同性愛的な感情を抱く影山留加を演じた。 私立の名門男子中学校を舞台にした本作は、『トーマの心臓』や『風と木の詩』(ともに小学館)といった少女漫画のテイストを学園ドラマに持ち込んだ怪作で、演技経験に乏しい10代の俳優が演じるため、たどたどしい部分もあるのだが、それが逆に生々しい迫力を与えており、思春期の少年に宿る神々しい切迫感は他の追随を許さないものだった。 『人間・失格』は『高校教師』、『未成年』と並ぶ野島伸司のTBSドラマ3部作といわれる初期代表作だが、『高校教師』では女子高生に投影されていた無垢なる存在への憧れが、本作では少年たちに投影されている。対して『未成年』では、SMAPの香取慎吾が演じる知的障害者のデクがその役割を果たすこととなるのだが、野島が描こうとした無垢なる魂を体現する役割を果たしたのがジャニーズアイドルの少年たちだった。 土9『金田一少年の事件簿』という記念碑 その後、堂本剛は95年にミステリードラマ『金田一少年の事件簿』(以下、『金田一』)で主演を務める。土9(日本テレビ系の土曜9時枠、現在は土曜10時枠に移動)で放送された本作は、ジャニーズアイドル主演×漫画原作によるティーン向けドラマという方向性を決定付けた記念碑的作品だ。 チーフ演出を務めたのは映像作家の堤幸彦。MVやバラエティ番組で培った堤作品の映像は、当時のテレビドラマとしては異質なもので、カット数が多い細切れの映像の中、俳優はアニメのキャラクターのように撮られていた。 同時に堤の映像はドキュメンタリー的でもあり、当時のホラー映画ではやっていた手持ちカメラ一台で撮影される揺れのある映像は、独自のリアリティを生み出し、人工的でありながら生々しい映像を展開していた。堤がここで開花させた映像美学はジャニーズアイドルと相性が良く、アニメや漫画の手法を実写ドラマの中に取り込むキャラクタードラマの嚆矢となった。 次のページ 月9や金曜ドラマで俳優として場を広げたSMAP 1234次のページ Yahoo 人間・失格-たとえばぼくが死んだら- DVD-BOX 関連記事 『お兄ちゃん、ガチャ』、野島伸司がジャニーズ枠で描いた“アイドルと消費者”の関係性とは『銭の戦争』――冷たさと優しさの両極で光る俳優・草なぎ剛の“凡庸さ”という武器『ごめんね青春!』“悪人”を拒絶し居心地のよさに回収されるクドカンドラマの弱点Sexy Zone・中島健人、『黒服物語』での迫真の芝居を上回る“アイドル性”の長短『ぬ~べ~』ら「情けない男」役で光る、関ジャニ∞・丸山隆平が持つ“暴力性”の魅力