コラム
仁科友里の「女のための有名人深読み週報」

寺島しのぶ、伊藤沙莉と脚本家の熱愛は「うらやましい」? 『ワイドナショー』発言から日本映画界の性加害問題を考える

2022/04/22 12:30
仁科友里(ライター)

 三田といえば、東映が手掛けた映画『殺られてたまるか』(60年)にて、いきなり主役級のポジションで女優デビュー。以降も、73年までにNHK大河ドラマ3本に出演しており、当時から日本を代表するトップ女優だったといえる。“格”で考えるのなら、脇役を引き受けなくてもいいと思う人もいるだろう。しかし、大女優であっても、心からいいと思える当たり役に出会えることは稀で、だからこそ、主役にこだわらなかったのではないか。

 その点、今をときめく人気脚本家が恋人なら、自分を生かすような脚本を、最初から自分のために書いてくれて、回り道をしないでも“当たり役”に出会えそうだ。寺島も、三田と同じようにトップ女優となっても甘んじず、さらなる当たり役を求める気持ちから「うらやましい」「女優さんだったら、その人のために書いてくれたりするわけじゃないですか」と発言したのかもしれない。

 しかし、映画界の性加害について騒がれている今、寺島の言葉は誤解を招くのではないかと思う。すでに地位を確立した女優であっても、貪欲に役を求めるような世界だと知らない人が寺島の発言を聞いたら、若い女優が仕事目当てに人気脚本家に近づいた、もしくは仕事が欲しいなら人気脚本家と付き合うのが近道だと、大女優自ら勧めているように聞こえてしまうのではないか。

 恋愛というのはプライベートなことだが、その時ですら、周囲からの「相手は売れているかどうか」「役者としてメリットはあるか」という仕事上の評価がついて回る。それだけ、芸能界というのは熾烈な競争社会なのだと考えると、特に実績のない女優や、さらなる活躍を目指す女優が“当たり役”に出会いたいと願う気持ちを利用して、性加害を働く状況は続いてしまいそうだ。

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