コラム
仁科友里の「女のための有名人深読み週報」

榊英雄と妻・和、被害者よりも「身内」に触れた公式コメントに読み取る“芸能界の体質”

2022/04/15 21:00
仁科友里(ライター)

 榊のスキャンダルを受けて、「勝てば官軍負ければ賊軍」ということわざが頭に浮かんだ。戦では、戦いに至る理由よりも勝敗のほうが大事で、勝ったほうが正義となり、負けたほうは反逆者とみなされることをいう。ジャニーズ事務所の生みの親で、日本を代表するプロモーターの故ジャニー喜多川氏は、豊川誕ら所属タレントによく「勝てば官軍」と言い聞かせていたそうだ。確かにこのことわざは、芸能界のような人気商売の体質を現した言葉だといえるだろう。

 映画監督なら観客動員数、ミュージシャンならCDなどの売り上げ枚数が数字として現れるので、それが多ければ高く評価され、彼らが所属する事務所や配給会社、レコード会社、さらに家族などの「身内」も潤うはずだ。こうなると、その業界は「売れっ子さまさま」の状態になっていき、極端な成果主義がまかり通るようになるだろう。売れれば売れるほど「身内」からはチヤホヤされるが、不祥事を起こせば「身内」に大きな損害を与え、そっぽを向かれてしまう。

 反対に、かけだしの役者のように知名度や数字を持っていない人は、業界内でどうしても立場が弱くなる。売れている・売れていないは単なる数字上の評価であって、売れていない人を軽んじていい理由はない。しかし、芸能界のように極端な成果主義の場所では、「勝てば官軍」とばかりに、「売れっ子」に権力が集中する一方、それ以外の人は軽んじられがちだ。

 こうした状況と、スタッフや家族などの「身内」だけを大事にするような榊と和の文章は、無関係ではないと思う。「身内」でも「売れっ子」でもない人を軽んじていることが、パワハラや性加害がなくならない一因となっているのではないだろうか。

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