サイゾーウーマン芸能韓流映画『野球少女』モデル選手のいま 芸能 崔盛旭の『映画で学ぶ、韓国近現代史』 映画『野球少女』で描かれた、韓国初の女性野球選手はいま――物語とは決定的に異なる「悲しい」結末 2022/03/25 19:00 崔盛旭(チェ・ソンウク) 崔盛旭の『映画で学ぶ、韓国近現代史』 『野球少女』という“ファンタジー”は、現実になり得る 『野球少女』の公開とともに、ヒャンミも再び脚光を浴びることとなり、多くのインタビュー記事に登場した。映画の感想を聞かれたヒャンミは「面白かったけど、悲しかった」と答えている。孤立した環境の中でも野球を続けたいと願うスインとヒャンミは多くの面で重なるものがあるが、結果的にプロにはなれなかったヒャンミと、トライアウトの結果プロの夢がかなったスインでは、決定的に結末が異なっている。映画を見たヒャンミは、「プロの夢」をかなえられなかった現実の自分を再び突きつけられてしまったかもしれない。 だが、未来的な視点に立つならば、こうして映画が「ファンタジー」を描くことは、第二、第三のヒャンミたちの希望となり、彼女たちがスインになれる可能性を広げてくれるように思う。現実社会からは生まれない発想を映画がファンタジーとして描くことで、逆にそれが現実になり得る。それは「映画」が持つ力でもある。 1905年、アメリカ人宣教師によって韓国に初めて野球が紹介されてから、軍事政権下で国民の目を政治からそらす目的もあって、全斗煥(チョン・ドファン)がプロ野球を発足させたのが82年。極めてのろのろとした歩みではあるが、韓国野球界も今日まで発展を遂げてきた。 次なる目標が、現在のシステム内での女子選手の活躍なのか、女子プロ野球リーグの設立なのか、正直私にはわからない。だが、女性であれ男性であれ、トランスジェンダーであれ障がい者であれ、はたまた金持ちだろうと貧乏だろうと、誰でもやりたいことに挑戦でき、それを受け入れて応援する人々の姿は、社会が目指すスポーツの最も健全なあり方であることに変わりないだろう。 崔盛旭(チェ・ソンウク) 1969年韓国生まれ。映画研究者。明治学院大学大学院で芸術学(映画専攻)博士号取得。著書に『今井正 戦時と戦後のあいだ』(クレイン)、共著に『韓国映画で学ぶ韓国社会と歴史』(キネマ旬報社)、『日本映画は生きている 第4巻 スクリーンのなかの他者』(岩波書店)など。韓国映画の魅力を、文化や社会的背景を交えながら伝える仕事に取り組んでいる。 前のページ12345 最終更新:2022/03/25 19:00 楽天 野球少女 男子ばかりの「甲子園」に違和感を抱くように…… 関連記事 韓国映画『バッカス・レディ』4つのセリフが示す、韓国現代史の負の側面を背負う高齢売春婦の悲しすぎる人生人気の韓国映画『7番房の奇跡』、時代設定が「1997年」だった知られざる理由『エクストリーム・ジョブ』を韓国コメディ映画部門の歴代1位に押し上げた、韓国の国民食“チキン”韓国人との「区別」、詐欺・セクハラ被害……映画『ファイター、北からの挑戦者』に映る “脱北者”の現実ベトナム戦争の虐殺被害者の証言と市民同士の連帯を映した、韓国ドキュメンタリー映画『記憶の戦争』 次の記事 スノ・渡辺、宮舘は「嫉妬がひどい」 >