“万引き犯”に手を握られ……スーパーの鮮魚部長メロメロ!? 罪を犯した相手に「いつでもうまいもん食わしたる」!
近くで接してみると、思ったより大柄だった結実さんは外国人で、私を振りきって店内のレジに舞い戻ろうとしました。少し引きずられながらも両手でつかんで制止して、事務所で支払ってもらうよう声をかけながら、逆に押し込むようにして連行します。その道中、なぜか手を握ってくるので、これ幸いと逃走を阻止するべく握り返して対応しました。
「万引きです」
手をつないだまま事務所に入ると、パソコン作業の手を止めた店長から、応接室に結実さんを通すよう指示されます。コートの下にある未精算の商品をテーブルに並べてもらい、続いて身分証明証の提示を求めると、財布から外国人登録証を取り出してくれました。確認すれば、ベトナム人留学生だった結実さんは21歳で、店の近くにあるワンルームマンションでひとり暮らしをしていると、片言の日本語で話しています。
今回の被害は、計5点、合計で800円ほど。
一番初めに隠していたのは、袋詰めのパプリカで、盗品はダイエットに効果がありそうな食品ばかり。滞在期間に問題はないようですが、お金は一銭も持っておらず、警察を呼ばれてしまえば大事になる様相です。本人もわかっているのか、執拗に私の手を握ったまま、その場に膝をついて涙ながらに「ゴメンナサイ」と繰り返しています。
「なに盗ったん? ゼニはあんの?」
状況確認にきた店長が応接室に入ってくると、膝をついたまま方向転換した結実さんは、許しを請いながら両手で店長の手を握りました。それを嫌がることなく被害品を一瞥した店長は、手を握られたままデスク上にある電話の受話器を上げると、内線で鮮魚部長を呼び出します。
「なんや、またバアさんかと思ったら、若い姉ちゃんやないかい。珍しいのお」
床に座る結実さんを見て、毒気を抜かれた様子の鮮魚部長が、店長を睨んで言いました。
「おどれ、なに鼻の下伸ばしてるんや! とっとと、通報してこんかい!」
「はい、すみません」