“万引き犯”に手を握られ……スーパーの鮮魚部長メロメロ!? 罪を犯した相手に「いつでもうまいもん食わしたる」!
(ああ、あの人ね……)
店内に入ってまもなく、巡回がてら鮮魚売場の調理場に目をやると、刺身包丁を片手にダミ声で指示を出す鮮魚部長の姿が確認できました。おそらくは50代前半くらいの方でしょうか。目つき鋭い精悍な顔つきは、昭和の大親分といった雰囲気で、包丁を持って構える姿からは説得力のようなものすら感じます。
(この人に怒られたら、きっと泣く)
そう感じさせるほどの威圧感が、体全体から発せられているような方で、強面の店長と並べば相当な威力を発揮するだろうと容易に想像できました。ここで結果を出せなければ、その威圧感を味わうことになる。知らぬ間に、自分が威圧されていることに気付いた私は、目を凝らして不審者の発見に勤しみます。
(ん? あの子、なんだろう?)
午前11時半過ぎ。いつにも増して集中していると、お昼のピークを迎えつつある店内で、20代前半くらいにみえる女性が目に留まりました。タレントの岡田結実さんに似ている顔立ちの整った美人さんが、この店一番の死角である酒売場でリュックを降ろし、商品らしき袋状の物を入れていたのです。その様を見れば、何かを隠したようにしか思えず、目を離さないことに決めました。
降ろしたリュックを左肩に背負い、左手にコートを下げた結実さんは、カゴを持たないまま総菜売場に向かって早足で歩いていきます。そこでグリーンサラダを手にしたあと、各売場でプレッツェル、フルーツスムージーを手に取って重ね持った結実さん。それらをコートで覆い隠して店の外に出ていきました。
(やっぱりね)
心の中で呟きながら結実さんの後を追い、リュックのひもを掴むと同時に、そっと声をかけます。
「こんにちは、お店の者です。お持ちのサラダとか、お支払いただけますか?」
「チガウ、ゴメンナサイ、イマハラウ」