サイゾーウーマン芸能テレビ長瀬智也の未完成な存在感 芸能 ドラマ俳優クロニクル 長瀬智也、『池袋ウエストゲートパーク』以前の未完成な存在感――『白線流し』に刻まれた姿 2022/02/09 17:00 成馬零一 長瀬智也ドラマレビュー成馬零一 『白線流し』長瀬智也の表情は、見ているだけで切なくなる 長瀬が演じる渉は、いつも不機嫌そうにしており、常に人を睨みつけるような表情をしている。まるで自分をとりまく世界の全てを憎んでいるかのようだ。同時にその表情には哀愁があり、彼を見ているだけで切ない感情がこみ上げてくる。渉は自分の気持ちをうまく言葉にできず、常にいら立っているようだ。そんな彼の刺々しい顔は周囲を威嚇し、あらぬ誤解を生んでしまう。 父親の死後、次から次へと不幸が押し寄せ傷ついた渉は「オレのことはほっといてくれ」と自暴自棄になっていく。そんな渉の姿を見た園子の中には「私が支えてあげなきゃ」と、まるでアイドルを応援するファンのような気持ちが芽生える。放送当時、園子と渉より2歳年上で、すでに受験生ではなかった筆者には、園子の渉に対する恋心が受験勉強からの逃避にしか見えなかった。 劇中には、園子が受験を間近に控えて、自分には夢や自慢できることが「何もない」と暗鬱とした気持ちになっている場面が繰り返し登場する。だからこそ、家庭の事情と経済的理由で夢を断念してしまった渉を、園子は応援したいと思うようになる。 渉を心配する園子の優しさに嘘はないと思う。だが、受験を控えた大事な時期に渉のことばかり考えている園子の姿を見ていると、「自分の現実と向き合いたくない」から恋に逃げているように感じ、痛々しくて直視できなかった。だが、すでに大人になった今の立場から見ると、その痛々しさも含めて、10代の時にしか出せない爆発的なエネルギーを感じて圧倒されてしまった。 次のページ 『白線流し』には長瀬智也が大人の男に変わる姿が刻まれた 前のページ123次のページ Yahoo 白線流し DVD-BOX 関連記事 ドラマ評論家が選出「2022年ブレークしそうな若手俳優」ベスト3! ジャニーズから2人ランクインドラマ評論家が選出、2021年の隠れた傑作ドラマ『未来世紀SIBUYA』! Netflix・Huluほか配信作を総括反町隆史の名を不動にした学園ドラマ『GTO』に見る、『相棒』に至る俳優イメージとは?KinKi Kidsドラマ『ぼくらの勇気 未満都市』、ユーモアあふれる2人の軽妙なやりとりと年相応の男の子らしさの魅力伝説のドラマ『NIGHT HEAD』に詰まった90年代前半の“空気感”――豊川悦司の「怒り」と武田真治の「弱さ」が、暗い輝きとなった