オンナ万引きGメン日誌

万引きGメンを負傷させた我が娘! 土下座する父親に店長が「ポリ袋の大量使用」チクリ

2022/01/22 16:00
澄江(保安員)

万引き犯が逃げ込んだ団地で出会った初老の男性、「それ、ウチの娘だ」

「不審者は、自然と寄ってくるもの」

 昔、先輩に教わった言葉を思いだしつつ、なんとなく気になって見ていると、総菜売場に直行した少女はポリ袋をロールから切り取って、その中に焼肉弁当を入れました。続けて、野菜スティックとカスタードプリン、それにスムージー系のドリンクを手に取っては、ひとつずつ袋に詰めるという行動を繰り返します。袋の口を結びながら歩いていくので不審を強めて後を追えば、レジ列に並ぶことなく通過して、未精算の商品を抱えたまま出口に向かって歩いていきました。いわゆる、持ち出しという手口です。出口直前から速度を上げて、この上ない早足で外に出た少女の後を必死に追いかけ、そっと声をかけます。

「お店の者です。何かお忘れ……」

 声をかけた途端に振り返った少女は、袖口をつまむ私の手を振り払って転倒させると、高いヒールの音を立てながら逃げ出しました。すぐに立ち上がって全力で後を追うも、お尻あたりに痛みを感じて、きちんと走ることはできません。あきらめることなく、左足を引きずるように追いかけると、左手にある団地群の敷地内に逃げ込む少女の姿を目撃しました。

 警察に通報しながら後を追って、団地の敷地内を見回すも、すでに女の姿はありません。周囲の様子を見張りながら警察の到着を待つことにして、誰でも通行可能な中通路から各棟の入口を見て回ると、放置された自転車のカゴに盗まれた商品を入れたポリ袋が入っているのを見つけました。ここで待機することにして、まもなく到着した警察官に状況説明をしていると、この団地の住民らしい初老の男性が話しかけてきます。タレントさんに例えれば、「さらば青春の光」の森田さんに似ている感じの人です。


「何かあったの?」
「そんな大したことじゃないんだけど、ちょっと人を探しています」

 詳しい説明を避けつつ、不安を抱かせないように応じる警察官に、不満気な顔をみせた森田さんが尋ねます。

「どんな人? ここに住んでいる人なら、大体わかるよ」

 それならばと、警察官が逃走した女の人着を伝えてみると、みるみる顔を曇らせた森田さんが言いました。

「それ、ウチの娘だ。あいつ、何したの?」
「まだハッキリとは言えないんだけど、もしそうなら娘さんを呼び出してもらっていいですか?」


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