森三中・黒沢かずこに学ぶ、「敏感力」の生かし方――面倒くさがられないために大事な“一線”はどこか?
羨望、嫉妬、嫌悪、共感、慈愛――私たちの心のどこかを刺激する人気芸能人たち。ライター・仁科友里が、そんな有名人の発言にくすぐられる“女心の深層”を暴きます。
<今週の芸能人>
「敏感が行き過ぎちゃって、面倒くさい人と思われている部分もあると思う」森三中・黒沢かずこ
『あちこちオードリー 売れっ子&レジェンドの名場面SP』(11月10日、テレビ東京系)
2011年に芸能界を引退した島田紳助さんが、お笑い芸人に向く男性について「生まれついて明るいやつか、逆に暗いやつ」と話していたことがある。生まれついて明るい人がお笑い芸人に向いているのはわかるが、「暗いやつ」がお笑い向きというのは、意外に聞こえるかもしれない。島田さんは「勉強や運動ができない、見た目が良くない、モテないなどのコンプレックスをうまい具合に発酵させて笑いにできると、面白くなる」といった意味の解説をしていたと記憶している。
長期間にわたる景気の低迷や、コロナ禍で他人と接触しない生活が当たり前となりつつある今、公私共に充実している“リア充”な芸能人の存在価値は薄れているように思う。それに代わって、島田さんが言うところの「コンプレックスをうまい具合に発酵させた笑い」が求められており、それができそうなのは「自分について考えすぎている芸人」ではないだろうか。
今年4月25日放送のラジオ『日本郵便 SUNDAY’S POST』(TOKYO FM)に出演し、「私って生きるのがヘタだと思うんですけど……」と発言した森三中・黒沢かずこは、典型的な「考えすぎている芸人」だと思う。
09〜10年に放送されていたバラエティ番組『人志松本の○○な話』(フジテレビ系)の「ゆるせない話」回に出演した黒沢は、「(オリエンタルラジオ・藤森慎吾やキングコング・梶原雄太ら)イケイケ後輩の前を5往復したのに、挨拶してもらえなかった」とし、その理由を「森三中がツッコミもできない、ボケのアシストもできない、フリもできない、後輩にとってどうでもいいグループだから」と分析していた。「ひどい扱いを受けるのは、森三中がヘボいから」と自虐的に解釈していたようだが、それは事実とはいえないだろう。
なぜならば、藤森は『アメトーーク!』(テレビ朝日系)などに出演した際、売れているときは天狗になっていて、ピース・綾部祐二など、かなりお世話になった先輩にも挨拶しなかったことを明かしているからだ。挨拶をするかどうかは、藤森が自身の状況を踏まえて判断した結果であり、黒沢を含んだ森三中の価値と必ずしも関係があるわけではないし、「悪く考えすぎ」だといえる。