コラム
オンナ万引きGメン日誌
逃走万引き犯が捕まった! 「しっかり思い出して」検察庁でGメンが体験したイヤ~な話
2021/11/27 16:00
「今日は、これで結構です。状況次第で出廷いただくことになるかもしれません。その時は、よろしくお願いいたします」
このまま被疑者が否認を貫けば、証人として出廷して、彼女の犯罪行為を証言しなければなりません。それまで記憶がしっかりしていればいいのですが、日常的に犯罪の現場を目撃していると、みな同じようなことをするので記憶が混同してしまうのです。無論、加齢による記憶の衰えも否定できません。
(きっと、なんとかなるでしょう)
身支度を整えて席を立つと、私の肩くらいまでしかない衝立の向こうにいる男と、不意に目が合いました。すぐに目を逸らされましたが、その瞬間に男の正体を思い出して、急に鼓動が激しくなります。数年前まで、同じ事務所に所属していた元同僚だったのです。
「おばあちゃん、こんなことしていたら、みんな心配するよ」
一緒に勤務した時、捕捉した老女を諭す彼の言葉を思い出しました。同じ口で老女を騙し、金を取っていたとすれば、いままでの善行もふいになることでしょう。
(文=澄江、監修=伊東ゆう)
最終更新:2021/11/27 16:00