コラム
【連載】わが子から引き離された母たち

できたちゃった結婚後、夫の浮気グセが発覚! 子どもから「何々くんママとご飯食べてきたよー」と聞くように……

2021/11/20 11:00
西牟田靖
写真ACより

 『子どもを連れて、逃げました。』(晶文社)で、子どもを連れて夫と別れたシングルマザーの声を集めた西牟田靖が、子どもと会えなくなってしまった母親の声を聞くシリーズ「わが子から引き離された母たち」。おなかを痛めて産んだわが子と生き別れになる――という目に遭った女性たちがいる。離婚後、親権を得る女性が9割となった現代においてもだ。離婚件数が多くなり、むしろ増えているのかもしれない。わずかな再会のとき、母親たちは何を思うのか? そもそもなぜ別れたのか? わが子と再会できているのか? 何を望みにして生きているのか?

第6回 山川ひかるさん(38歳・仮名)の話(前編)

「4年前の春、夫やその家族に、子どもたち3人を連れ去られました。今ではまったく会うことすらできません。夫はマイホームに別の女性とその連れ子と住んでいて、自分の子の養育を放棄しています。子どもたちは、夫の母の家で暮らしているんです」

 そう話すのは、山川ひかるさん。

「彼の素性がわかっていたら、結婚なんかしませんでした」

 肩を落とすひかるさん。夫は、どうやってここまで彼女を追い込んだのか? 修羅場の中、双方の家族はどうしていたのか? 前半では家庭が壊れるまでを描く。

地元の先輩の後輩と結婚

――生い立ちから教えてください。

 会社員の父と専業主婦の母のもとに、千葉で生まれました。4人きょうだいの3番目で、ほかは男。父は仕事に一生懸命な人で、遊んでもらった記憶がほとんどありません。一方で、母は子育てを一手に担っていました。私たちきょうだいの手がかからなくなってくると、食堂などでパートの仕事をするようになりました。

――役割分担がはっきりした、典型的な昭和の家庭だったんですね。

 当時は、それが当たり前でした。だから、父が子育てにしっかり関わってくれないことに違和感はありませんでした。私も大人になって子どもができたら、父と母のような生き方をするんだなと思っていました。

――進学して、結婚に至るまでの経緯について教えてください。

 高校を卒業すると、そのまま地元で就職しました。内装関係の小さな会社。そこでかなり理不尽な扱いを受けて、3カ月で辞めました。その後は東京ディズニーシーのレストランで働いたり、住宅設備メーカーで働いたり。26歳で結婚するまでは、ずっと実家住まいでした。

――結婚相手とは、どうやって知り合ったんですか?

 地元の先輩の後輩が、後の夫でした。先輩と一緒に7人ぐらいで飲みに行ったとき、彼がいて、「連絡先を教えて」って言われたんです。彼は私よりも1つ下。ガソリンスタンドでバイト中でした。

 その後、2年ぐらいは疎遠になったんですけど、あるとき突然、携帯に「久しぶりです」と連絡が入って、なんとなく会ってみることにしたんです。そのとき、彼、「携帯ショップで店長をやってる」と言っていました。

 それで実際に再会してみると、彼、マニュアル車を運転できるんですよ。私はけっこう車好きで、当時乗ってたのはマニュアル車だったんです。マニュアル車つながりで、距離がぐっと縮まって、それ以降、お付き合いするようになりました。そして、しばらくたった頃、母に言われたんです。

 「そろそろ結婚しないの? 年取ってから産んでも、子育て手伝えないからね」と。

――結婚は勢いという、まさにそういう流れだったんですね。

 ほんとそうです。そして双方の両親にいよいよ挨拶という段になったとき、彼が言ったんです。「挨拶するための既成事実が欲しい」って。それを聞いて、何か目標とか、すでに成し遂げたことでも発表するのかと思うじゃないですか? でも違っていました。

 「子どもができれば、結婚の挨拶に行ける」って言うんです。それで実際、彼の子どもを身ごもりました。

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