「離せよ、このくそばばあ!」悪質な転売万引き犯「クロキン」の抵抗に女店長が取った勇敢な行動
長年に渡り愛用しているとしか思えぬ黒地に金ラインの入ったジャージ上下に、フレームの細い眼鏡をかけた30代とおぼしき痩せた男性です。しばらく手入れしていないであろう金髪は、根元から数センチが漆黒になっており、着用するジャージと同じ色合いになっていました。それを理由に心の中で「クロキン」と勝手に名付けて、そっと追尾を開始します。
自転車用品売場で足を止め、大きなリュックサックを手にしたクロキンは、それを右肩にかけるとゴルフコーナーに向かっていきました。そこにディスプレイされたゴルフシューズに目をやり、下部に積まれた箱入りの在庫を照らし合わせると、店員さんに断わることなく開封して中身を確認しています。あまりの怪しさに目を離さないでいたところ、手にした在庫商品をリュックサックに隠す瞬間を現認できました。リュックサックの大きさから、まだまだやりそうな雰囲気を感じていたところ、ゴルフボールなどの商品を同様に隠して、周囲を警戒しながら店内のトイレに入っていきます。男性用トイレに入られたので、私は中に入ることはできません。トイレの出口を見ながら、店長さんに目と手で合図を送って呼び寄せた私は、ざっと状況を説明して協力を仰ぎます。
「リュックを持ったまま店の外に出たら声をかけます。もし暴れたら、警察を呼んでもらっていいですか?」
「わかりました。私も一緒に行きますよ。なんかドキドキしてきたなあ」
「万引き、初めてですか? 黒に金色のラインが入ったジャージを着た金髪の男ですので、お願いします」
「その男の人、さっき見かけました。初めてですけど、あのくらいなら大丈夫かな」
あのくらいの意味はわかりませんが、2人で一緒にいるところを見られたくないので、すぐに別れてトイレの出入口を見続けました。数分後、未会計のリュックサックを自分のモノのように背負ってトイレから出てきたクロキンが、すぐ脇にある出口から外に出たところで声をかけます。