コラム
仁科友里の「女のための有名人深読み週報」

フワちゃんのタメ口に「NO」を突きつけた有吉弘行はすごい? “毒舌”でも人を傷つけず、批判されないやり方

2021/09/09 21:00
仁科友里(ライター)

 
 とはいえ、「敬語使わなくてもいい」と言っているが、その前日の夏休み1日目、フワちゃんが「有吉、おしりプリプリになっている」と呼び捨てした際、「フワ、有吉『さん』な」とはっきり注意していた。翌日に遅刻したときは「敬語を使わなくてもいい」と言った有吉も、本音の部分では「礼儀を大切にすべき」と考えている証しだと私は感じたが、それはさておき、番組開始早々のこの忠告はすごいと思った。 
 
 誰にでもタメ口を使うフワちゃんの芸風に「NO」をつきつける芸能人はほとんどいない。前述したように、正面切って「さん付け」を要求すると、「タメ口くらいで目くじら立てるのは、器が小さい」「偉ぶっている、パワハラだ」と批判する視聴者が出て自分が損するかもしれないし、それを芸能人たちは一番知っているからだろう。

 しかし、自分にとって嫌なことは最初に言って釘を刺したほうがストレスは溜まらないし、フワちゃんとてバカではないから(番組の最初では「有吉さん」と呼んでいた)、先輩が本気で嫌がっているとわかれば、おとなしくやめるはずだ。 
 
 注意とハラスメントの違いを明確に言語化しにくい現在において、カメラが回っているところで後輩に何かを指摘することは、リスクのある行為といえるだろう。しかし、有吉はそれをいとわず、かつ毒舌の後にその倍フォローすることで、攻撃性をなきものにした。一言で毒舌といっても、10年前と今ではウケる毒舌が違う。そのあたりの微調整が抜群にうまいからこそ、芸能界で活躍できるのだろう。

 テレビはマンネリ化して「同じような番組」ばかりかもしれないが、有吉のように“変化する出演者”に注目して見ると、こんな発見があって面白い。そして毒舌でありながら、いやな余韻を残さない有吉には、おみそれしましたと言うしかない。

仁科友里(ライター)

1974年生まれ、フリーライター。2006年、自身のOL体験を元にしたエッセイ『もさ子の女たるもの』(宙出版)でデビュー。現在は、芸能人にまつわるコラムを週刊誌などで執筆中。気になるタレントは小島慶子。著書に『間違いだらけの婚活にサヨナラ!』(主婦と生活社)、『確実にモテる 世界一シンプルなホメる技術』(アスペクト)。

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最終更新:2021/09/09 21:00
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