コラム
オンナ万引きGメン日誌
「このまま、お前の葬式をやってやりたいくらいだよ」喪服姿の老女、“身も凍る万引きの言い訳”とは
2021/08/28 16:00
出入口の真上に設置された防犯カメラの存在を知らされ、途端におとなしくなった老女は、これをきっかけにすべてを認めてくれました。警察官と一緒に話を聞けば、この店の近くに家族と住んでいるという老女は、年金暮らしの74歳。複数の犯歴があるそうで、前回捕まった時、次にやったら逮捕すると脅されていたことを思い出して暴れてしまったと話していました。今回の被害は、計15点、合計9千円ほど。これから自宅で義母の法要があるそうで、早く帰らないと旦那に叱られると、財布から取り出した1万円札を震える手で握り締めています。
「これ全部、お供えするつもりで?」
「置いておくだけで捨てちゃうものだから、お金払うのがバカらしくて」
「盗んだモノで供養するなんて、仏さんも、さぞかし居心地悪いでしょうね」
「いいのよ。ひどく意地悪な人だったから……」
そのまま事務所内で手続きを進め、ガラウケに家族を呼んでもらうと、まもなくして老女の旦那さんと娘さんを名乗る2人が喪服姿で迎えにこられました。
「このまま、お前の葬式をやってやりたいくらいだよ」
家族2人に見下ろされ、体をすぼめてうつむく老女の姿は痛々しくも、お義母さんの気持ちを思えば同情する気にはなれません。この人自身の葬儀や法要は、どんなものになるのだろう。そんなことまで想像してしまった私も、きっと意地悪な女です。
(文=澄江、監修=伊東ゆう)
最終更新:2021/08/28 16:00