『ザ・ノンフィクション』レビュー

『ザ・ノンフィクション』女装一筋に見る、類まれなオタク人生「女装と家族と終活と ~キャンディさんの人生~」

2021/08/02 16:45
石徹白未亜(ライター)

キャンディがオタクとして類いまれな理由

 放送を見て、キャンディのことをオタクとして尊敬の念を思いを抱いた。まず対象(女装)への深い愛がある。同人誌即売会などで気合の足りないコスプレを見ると、本当に対象を愛しているのかと思ってしまうが、キャンディのコスプレは小道具まで手が込んでいてクオリティが高いのだ。

 また、キャンディはただ女装がしたいだけであり、バズりたいといった「他人の顔色をうかがう感じ」が一切ないのもいい。私がキャンディだったら、せっかく手間暇かけて衣装を作るならSNSでバズりたいと、今はやっているコンテンツの女子キャラクターのコスプレをしよう、とスケベ心を出していたと思う。そして思ったよりバズらなかったら、別に頼まれたわけでもないのに、「こんなに努力したのに報われなくてつらい」と勝手に被害者意識を募らせたかもしれない。

 キャンディの行動には、こういったしょうもない意識が一切ない。他人を全く気にしておらず、「自分の楽しさ」だけにひたすらフォーカスしている。

 キャンディは女装して街を歩いて人の反応を見るのが好きなのだが、どの反応でも面白がっているように見えた。「肯定的、好意的な反応しか見たくない」「否定的な反応をされたら立ち直れない」という弱さがない。こういう人こそ強い人というのではないかと思う。

女装と日本人