『ザ・ノンフィクション』レビュー

『ザ・ノンフィクション』老舗を正したいムコの鼻息「老舗の寿司屋に婿が来た ~4代目は元美容師~」

2021/07/26 17:57
石徹白未亜(ライター)

勇み足の婿、「すっぽかし」により救われる

 雅貴は入店からわずか半年程度で、60年店を切り盛りしてきた大女将のやり方に不満を抱え、それを本人に伝えてしまったことで、案の定怒らせる。

 組織には、今となっては悪習でしかない古いルールがあるとは思うが、それを新入りが「古参の悪習を正す」と進言したところで、「こちらの頭が固かった、ご指摘感謝します」となるわけはないだろう。相手にだって感情があるし、相手はそれまでそこを守ってきた先輩だ。「御進言」をするとしたら、そこに配慮し、ものすごく慎重な態度で、かつ、時期を見計らってやるべきことだったように思える。

 しかし、雅貴にはいずれ自分が継ぐのだから、自分の意見は受け入れてもらえるはずだ、という思い上がりもあったのかもしれない。

 雅貴と大女将のいさかいのとばっちりを受け、シフト管理を任された益美は、その仕事をおそらく「あえて」すっぽかし、大女将に仕事を戻す。この“大人の対応”により、雅貴は首の皮一枚でつながったように思う。

 雅貴の勇み足も、番組の最後ではだいぶ落ち着いたように見えた。益美をはじめ、周りの大人に感化されたところもあるのかもしれない。なお、親方は番組スタッフの取材に「自分で恥かいて尻に火がついて一生懸命やる、多分みんなそうだから」と雅貴を大人な態度で見守っていた。


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