コラム
仁科友里の「女のための有名人深読み週報」

「自己肯定感」は褒められても高まらない? 峯岸みなみ&田中みな実の「結婚して自信を持ちたい」発言は“ちょっと違う”と思うワケ

2021/07/15 21:00
仁科友里(ライター)

 その一方で、一般的に「自己肯定感は親から子に与えられるもの」だと言われている。子どもは成長するにつれて活動範囲が広くなり、当然、失敗したり、周囲と軋轢を起こしたりすることもある。そういうときに、家庭が“安全基地”の役割を果たし、「外で何があっても、家に帰れば安心だ」という気持ちになれば、子どもは「失敗しても大丈夫」と思えるようになるはずだ。しかし、親が「失敗は許さない」「これくらいできないようでは、うちの子とは認めない」と言わんばかりの接し方をすると、子どもは「○○ができないと、親から愛してもらえないんだ」と解釈し、自己肯定感が低くなるとされる。

 とはいえ、世の中に完璧な人間がいないとするのなら、完璧な親もいない。そんな親が与える自己肯定感も完璧ではないと考えると、「自己肯定感が低い」というのは、誰にでもあてはまることではないか。「自己肯定感が低いから、生きづらい」「自己肯定感が低いから、恋愛がうまくいかない」という人は多いし、それはあながち間違ってはいないと思うが、これが自己分析だとしたら、少々雑といえるだろう。峯岸や、彼女と同じような悩みを持つ人にとって大切なのは、自己肯定感が高いか低いかではなく、自己肯定感が低いことで、具体的にどんな問題が起きるのか、客観的に考えられることではないか。

 例えば「仕事でミスをした。私は自己肯定感が低いから、すぐに“自分はダメだ”と思ってしまう」と悩む人もいるだろう。その時に、自分について考えるのではなく、「○○先輩はできる人だけど、本当にミスをしていないのか?」「ミスをしないとしたら、なぜなのか?」と視点を外に向けることは、客観的な考えの一つのあり方だ。先輩から学んでミスを減らすことができたら、「自己肯定感が低いから、“自分はダメだ”と思ってしまう」率は下がるだろう。「人の振り見て我が振り直せ」ということわざは、客観の基本である。

 最近は「自己肯定感は高ければ高いほどいい」というブームを感じるが、自己肯定感が仮に低いとしても、客観性さえあれば補えると思うのだ。

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