芸能
『ザ・ノンフィクション』レビュー

『ザ・ノンフィクション』オタク業界とやりがい搾取の関係「ここでしか生きられない私~34歳 秋葉原メイド物語~」

2021/07/12 17:55
石徹白未亜(ライター)
『ザ・ノンフィクション』(フジテレビ系)公式サイトより

日曜昼のドキュメント『ザ・ノンフィクション』(フジテレビ系)。7月11日の放送は「ここでしか生きられない私~34歳 秋葉原メイド物語~」。

あらすじ

 秋葉原のメイドカフェ・HEART of HEARTsで働くもち、34歳。同店は秋葉原でも有名なメイドカフェの一つで、スタッフから選抜された5人組アイドルユニットもあり、店内にはステージもある。新型コロナ前はインバウンド需要もあり「メイドバブル」で店は連日大賑わいだったという。

 しかしコロナの影響は秋葉原も直撃し、番組がもちの取材を開始した2度目の緊急事態が出る直前の2020年12月、店内の客の入りはまばらで寂しい状態だった。その日、売り上げ10万円を目指すが半分にも届かなかったという(番組内で、メイドカフェの客単価は3,000円程度と伝えられていた)。秋葉原では多くのメイドカフェが廃業に追い込まれており、番組内ではテナントを募集する張り紙が貼られた空きビルも映されていた。

 もちは内気で、友達らしい友達もいない少女時代を過ごし、漫画やアニメなどのオタク文化を心のよりどころにして生きてきた。24歳のとき、幾度となく訪れたオタク文化の聖地・秋葉原でメイドとして働きだす。働きぶりが評価され、今は店の実務を担う立場だ。

 親にはいまだにメイドの仕事を反対されているようだが、自分を支えてくれた場所を守ろうともちは奮闘し、自分の報酬を削ってでも店の維持費やスタッフの給料に回している。もちの貯金はコロナ禍でなくなり、番組スタッフに自分のお金はどのくらいあるのか尋ねられた時、財布に入っているだけと話し、財布には1,000円ぐらいしか入っていなかった。

 メイドカフェの閉店後も、売り上げを補うべく共同経営者のあずにゃんと共に早朝近くまでオンライン配信を行う。そんな日々では睡眠時間もままならず、事務所の片隅で体育座りのような姿勢で仮眠を取ったり、たまに自宅に帰れても、寝すぎないようソファーにもたれかかって寝るような生活だ。

 一方で、メイドバブルの恩恵をほとんど受けていないであろう店の10代のメイドスタッフたちは冷静だ。番組スタッフの取材に対し、もちのことは好きだし、尊敬しているが、もちのあまりに献身的すぎる働きぶりを前に、「自分の時間も仕事と同じくらい欲しいなと思っているので(もちと)同じ人生は嫌です」ときっぱり話す。

 2021年1月、緊急事態宣言の延長が決まり、それまで避けていたキャストの人員削減をもちは決断するも、人気スタッフも「卒業」してしまう。明日が見えない日々が続く中、客のほとんどいない店の片隅でもちは涙をぬぐう。

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