[女性誌レビュー]「婦人公論」2020年5月11日号

家事は「女の仕事」でも「愛情」でもない! 「婦人公論」の主張が、読者から反感を買いそうなワケ

2021/05/04 18:00
島本有紀子(ライター)

“時短掃除”が全然手抜きじゃない!

 次に見ていくのは、全国でナチュラルクリーニング講座を開催している本橋ひろえさんによる「5つの洗剤だけで家じゅうピカピカに」。“5つもの洗剤を使い分ける”という面倒くさいことが、「ラク」に分類されていることにまず驚きです。

 本橋さんの言う「ナチュラルクリーニング」とは、合成洗剤を一切使用しない掃除。「掃除は毎日のこと」だから「たった5種類の洗剤」で「時短」しましょう、とのことですが、「掃除は毎日のこと」という前提からして、意識の差を感じます。同誌読者にとっては当然の前提なのでしょうか。

 その5種類とは「重曹」「過炭酸ナトリウム」「石けん」「クエン酸」「アルコール」とのこと。“地球にやさしい”という大きなメリットのことを考えれば耐えられる面倒くささ……であるかどうかはその人次第ですが、とにかくこれは一般的な「ラク」ではないと信じたいです。

家事礼賛を「古い価値観」「刷り込み」とバッサリ

 最後に紹介したいのが、ナチュラルライフ研究家・佐光紀子さんによるアドバイス記事「不機嫌になるくらいならやめてみよう」です。

 『「家事のしすぎ」が日本を滅ぼす』(光文社)や『家事は8割捨てていい』(宝島社)といった、興味をひかれるタイトルの著作で知られる佐光さん。今回の記事でも、「家事は女の仕事であり、ちゃんと家族の世話をするのが良き妻、良き母。そんな古い価値観に縛られている人はまだまだ少なくない」とバッサリいきます。


 さらに「日本では、愛情弁当という言葉もあるように、『家事は愛情の証し』と考えがち」とし、「この発想が『ちゃんと家事をやらなきゃ』につながっているのでしょう」と分析。「家事は愛情ではなく、日々の生活を回すための技術」「何品もおかずを用意し、部屋をきれいにして……ちゃんと家事をする妻・母は愛情深くて素晴らしい。そんな刷り込みから自分を解放して」と提言しています。
 
 佐光さんの著書のAmazonレビューの評価が賛否真っ二つに分かれていることからも想像できるとおり、先のアンケートで「家事に疲れは感じない」と回答した“麻痺してる”群からは、「今まで頑張ってきたことを否定しないで!」といった反感も買いそう。しかし、そんな反感を抱く人にこそ、ちゃんと読んでほしい記事だと感じました。

島本有紀子(ライター)

島本有紀子(ライター)

女性ファッション誌ウォッチャー。ファッションページから読み物ページまでチェックし、その女性誌の特性や読者像を想像するのが趣味。サイゾーウーマンでは、「ar」(主婦と生活社)と「Domani」(小学館)レビューを担当していた。

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最終更新:2021/05/04 18:00
婦人公論 2021年 5/11号 [雑誌]
「家事を頑張ってきた人」を否定してるわけではないのよね