コラム
『おちょやん』解説

『おちょやん』成田凌演じる「天海天海」の史実がひどすぎる! 不倫妊娠だけじゃないヒロインへの裏切り

2021/04/22 13:00
堀江宏樹(作家・歴史エッセイスト)

 というように、渋谷の「私の履歴書」は、浪花千栄子の自伝『水のように』(朝日新聞社)の上をいく、ドラマ化できない事実のオンパレードなのでした。

 浪花は自伝『水のように』では、渋谷との出会いをほとんどしゃべっていないのですが、別の情報源から、彼女の史実に迫ることに今回成功しました。

 浪花は本当にイヤだったこと、都合の悪いことについては沈黙するクセがあるようです。

 浪花は(ドラマのように)芝居茶屋ではないにせよ、「岡島」という料理屋で居候兼女中として働いていたことがあります。自伝ではなぜかオールカットされているのですが、そこで同じように居候していた渋谷と出会い、そこで渋谷から彼がやっていた「家庭劇」に出演しないか、と持ちかけられ、女優の仕事にあぶれていた彼女はすぐに承諾したようなのです。

 ドラマの「鶴亀家庭劇」は、いざこざがあるものの、ちゃんと続いていますが、史実の「松竹家庭劇」は主要メンバーの脱退とか一時解散とか、本当にめちゃくちゃで、紆余曲折がありすぎるので詳細については省きます。ちなみに、松竹家庭劇は韓国公演に行ったこともあり、その時、浪花と渋谷は「デキたらしい」とのことです。当時の浪花をよく知る、和田富美恵という女性の証言です。

 また浪花と離婚後、渋谷の2人目の妻となった渋谷喜久恵いわく、劇団関係者にも渋谷と浪花の関係は「デキた」後も秘密でしたが、2人は大阪・住吉にある家で同棲を始めていました。

 2人が家でご飯を食べていると、ドラマでは星田英利さんが演じる須賀廼家千之助(すがのや・せんのすけ)のモデル、曾我廼家十吾(そがのや・じゅうご)が訪ねてきたので、浪花は便所に隠れたそうです。

 しかし、十吾が便所を使ったことで全てがバレて、彼の提案で「それなら正式に結婚しなはれ」といわれ、ようやく結ばれたのでした。

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