『おちょやん』解説

『おちょやん』成田凌演じる「天海天海」の史実がひどすぎる! 不倫妊娠だけじゃないヒロインへの裏切り

2021/04/22 13:00
堀江宏樹(作家・歴史エッセイスト)

不倫相手のためには家を購入した渋谷に……

 さらに、これまで自分と暮らしている時には、金はあったのに家を買うという選択をしなかった渋谷が、生まれてくる子どもと次の妻のためには自宅を購入したと知った浪花は、(離婚後なのに)激怒、自分たちの結婚生活をまるでなかったことのように振る舞うようになったようです。

 ドラマでも千代の父・テルヲの毒親具合は話題になりましたが、実際にも崩壊家庭に育った浪花は、温かい家庭に大きな憧れを持ち、妻として夫に尽くし、やがては母にもなるというような、古典的な理想を思い描いていたようです。推測ですが、母の愛を知らずに孤独に生きてきた渋谷との間に温かい家庭を作り、子どもも産んであげたいと思っていたのではないでしょうか。

 長年の夢が叶わなかったことが心残りで、コンプレックスですらあったのを、渋谷が別の女との間に子を設け、彼らのために家を買ったことで刺激され、ついに浪花は怒り心頭に達してしまったようなのですね。

 史実をたどれば悲しい話ばかりですが、今後、『おちょやん』ではどういうふうに千代と一平を描いていくのか、楽しみであり、ちょっと怖くもありますね。


堀江宏樹(作家・歴史エッセイスト)

堀江宏樹(作家・歴史エッセイスト)

1977年、大阪府生まれ。作家・歴史エッセイスト。早稲田大学第一文学部フランス文学科卒業。日本・世界を問わず歴史のおもしろさを拾い上げる作風で幅広いファン層をもつ。著書に『偉人の年収』(イースト・プレス)、『眠れなくなるほど怖い世界史』(三笠書房)など。最新刊は『日本史 不適切にもほどがある話』(三笠書房)。

記事一覧

X:@horiehiroki

原案監修をつとめるマンガが無料公開中。「La maquilleuse(ラ・マキユーズ)~ヴェルサイユの化粧師~」 最新刊は『本当は怖い江戸徳川史』(三笠書房)

最終更新:2021/04/22 13:00
水のように
こんな外道が称賛される世の中、まさに男社会