有名弁当店「キッチンDIVE」万引き事件をベテランGメンが考察! 同じ服装で犯行を繰り返すのは「よくあること」
すると、居並ぶレジカウンターの脇をすり抜け、レジとサッカー台の間を通過した女が、そのまま店の外に出て行くので、呼び止めるべく近寄ると、先程まで一緒にいた警察官が前方から歩いてきました。前を行く女も、その姿に気付いたらしく、明らかに歩行速度を上げて、この場から逃れようとしています。なにか用事でもあるのか、私の姿を目にして微笑みかけてきた警察官に、目と顎で合図をしてから女に声をかけました。
「こんにちは、お店の者です。これ全部、お支払いただかないと……」
「え、いや、車にポイントカードを忘れちゃって、取りにきたんです。ちゃんと払いますよ」
「いや、商品をバッグで隠して、お金払わないまま外に出たらダメなんですよ。そんな言い訳は通らないと思いますけど、もし否認されるなら、こちらの警察官とお話しいただけますか」
「…………」
声をかけるところから状況を見守ってくれていた警察官が、正面に立ちふさがる形で女の前に立ち、嫌気の差した顔を隠すことなく言いました。
「またですか、参ったな。ちょっとお姉さん、お店の人がお金もらってないって言っているけど、実際のところはどうなの?」
「いや、ポイントカードを車に忘れて……」
「そんなこと聞いてない。お金払ったのか、払っていないのか、それを聞いているの。どっち?」
「まだ払ってないです」
明らかに苛立っている様子の警察官から、少し強い口調で同行を求められた女は、警察官に腰元を掴まれた状態で事務所に向かいます。事務所に入ると、傍らのデスクで惣菜パンを食べていた店長が、目を丸くして叫びました。
「え、また? あ、8番さんじゃん。やっぱり、やっていたか。そうだよなあ!」
「店長、この人のことご存じなんですか?」
警察官の問いかけに、鬼の首を取ったような顔をした店長が、女を蔑むように見下ろしながら言いました。
「ずっとマークしていた人です。あんた、しょっちゅうやっていたろ?」
「いえ、そんなことないです。車にポイントカードを忘れただけなんです。信じてください!」
未精算の商品は、計7点。被害合計は、2万円を超えました。女の前歴次第では逮捕もあり得る大きな被害に、1人目の処理を終えたばかりの警察官は、どこか投げやりにもみえる不遜な態度で女の身分確認を進めています。報告書に記載するため、女の了解を得たうえで財布に入っていた運転免許証を警察官と一緒に拝見したところ、この店からほど近いところにあるコーポに住むという女は、34歳。警察官の問いかけに対して、いまは無職で、生活保護を受けながら生活していると話していました。所持金は、2,000円足らずで、クレジットカードなども持っていないようなので、盗んだ商品を買い取ることはできそうにありません。所持品検査の結果、この店のポイントカードまで財布から出てきて、女のウソも明らかとなりました。
「ポイントカードのことはさておき、どうやってお金払うつもりだったの」
「…………」