オンナ万引きGメン日誌

有名弁当店「キッチンDIVE」万引き事件をベテランGメンが考察! 同じ服装で犯行を繰り返すのは「よくあること」

2021/02/27 16:00
澄江(保安員)

万引き常習者「8番の女」とは?

 当日の現場は、関東郊外の住宅街に位置する大型ディスカウントスーパーK。食品をはじめ、衣料品やドラッグコスメはもちろん、カー用品や家電製品など、さまざまな品物を扱っている昭和感漂う老舗店舗です。建物の造りが古いこともあって、広大な2フロアの売場は死角だらけで、防犯機器もわずかしか設置されていません。その捕捉率は、いままで踏んできた中でも上位にあり、地域に潜在する高齢常習者をはじめ、小学生から外国人窃盗団まで、ありとあらゆる万引き犯が集まってくる検挙が絶えない現場といえるでしょう。

 裏口から総合事務所に出勤の挨拶に出向くと、いつもよくしてくださるミスチルの桜井和寿さんに似た店長が、満面の笑みで出迎えてくれました。

「そういえば、最近、変な女がよく来ていてさ。たぶん、やっていると思うんだよね」
「どんな人ですか?」
「40歳くらいかなあ。小柄で色の黒い、ショートカットの人でさ。いつも背中に『8』の数字が入った派手なジャンパーを着てくるから、すぐにわかると思うよ。8番の女、今日来るかわからないけど、注意してみて」

 どれほど派手なジャンパーかわかりませんが、すぐにわかるというので、相当に目立つ人なのでしょう。なぜだかはわかりませんが、万引き常習者は派手な服装をしていることが多いので、店長の言葉を信じて警戒にあたります。

 午前中に、2本のビールを盗んだ83歳の老婆を警察に引き渡し、お店の休憩室で持参した弁当をつつきながら、どことなく蛙亭の中野周平さんに似た警察官と微罪処分の処理を為して現場に戻ると、まもなくして無数のワッペンがつけられたピンクのスタジャンに、水色のスパッツという奇妙な服装をした女に目を引かれました。タレントの鈴木奈々さんを二回りほど大きくしたような雰囲気を持つ30代前半と思しき色黒の女です。右肩にかけられた特大サイズのエコバッグも気になって、相当に離れたところから行動を見守ると、カートを押す女の背中に大きな「8」の字のワッペンが貼られているのが見えました。


(この人が、8番の女ね。カゴに何も入っていないし、いま来たところかな)

 すると、入口脇にある高級青果コーナーで、箱入りのあんぽ柿をカゴに入れた女は、次に鮮魚コーナーで本マグロの刺身と酢ダコを、続いて精肉コーナーですき焼き用の黒毛和牛スライスを2パック手に取ってカゴに入れました。値段を確認することなく、次々と高額商品を手にしていますが、なぜか支払意欲が感じられないのが不思議です。

 続けてビールケースと10キロの米をカートの下段に載せて、人気のない日用品売場に移動した女は、肩にかけた特大エコバッグを下ろして、上段のカゴに入れた商品を覆い隠すようにして歩き始めました。通常客の歩行速度を大きく上回る早足で店内を歩かれ、危うく見失うところでしたが、女の派手な服装を目印にして食らいつきます。

万引きGメンは見た!/伊東ゆう