皇后の縁戚が「不敬罪」で逮捕!? 天皇家を揺るがした“新興宗教”スキャンダル【日本のアウト皇室史】
皇室が特別な存在であることを日本中が改めて再認識する機会となった、平成から令和への改元。「皇族はスーパースター」と語る歴史エッセイストの堀江宏樹さんに、歴史に眠る破天荒な「皇族」エピソードを教えてもらいます!
前回まで――戦前、大名華族・島津家の令嬢として生まれ、親族の男性と幸せな家庭生活を送っていた島津ハルさん。30代の頃から、教育者、学校経営者としても活躍していた島津さんは、宮内省からのスカウトを受けて転職、女官となりました。宮中でも調子よく出世しつづけ、良子皇后の女官長に、史上最年少の48歳で就任できた約40日後、異変が起きました。夫の急死によって愛も、仕事も、“全て”を島津さんは失ってしまったのです――。
堀江宏樹 そんな彼女の心のスキマを埋めたのは、自称・霊媒師の女、角田つねでした。「島津さんには特別な霊力がある」とおだてられ、自分を「神の生まれ変わり」だと思いこんでしまった島津ハルは、あやしげな新興宗教の幹部になったのでした……。
――スピリチュアル沼に沈み込んでしまっていますが、島津さん、本当に大丈夫なのでしょうか?
堀江 まったく大丈夫じゃないです。前世商法ってスピリチュアル系の常套手段なんでしょうけど、島津ハルは、天御中主大神(あめのみなかぬしのかみ)という、『古事記』では最初に登場する、まさに天地の歴史がこれから始まるよ! という時に出てくる神様の生まれ変わりに仕立て上げられてしまいました。
――ひえー!
堀江 島津は元・女官長ですから、神道系宗教団体の“人寄せパンダ”としては最適な存在でした。それだけでなく、島津は自分を神の生まれ変わりとして、危ない御神託を連発するようになるのですね。多くの信者たちの前で、まだ生きている人の生き霊、故人の霊などを問わず降霊させ、その人からのメッセージを伝えていたようです。
これが島津ハルを幹部とした神道系の新興宗教「きよめ会」もしくは「きよめの会」の主な活動だったとか。今でも誰それの守護霊が語る……とかいう某団体の教祖による本が出ているじゃないですか。ノリはあれと似ているかもしれません。しかし、島津の団体の主要テーマは「天皇家はどう変わるべきか」だったわけです。
――それは、ちょっと危ない気がしますね。
堀江 運悪く、というか、ちょうど昭和10(1935)年ごろのことです。昭和11年、“昭和維新”を唱える青年将校による軍事クーデター「2.26事件」が起きる直前のこの時期、あちらこちらで新興宗教の弾圧も始まっていました。