コラム
【連載】傍聴席から眺める“人生ドラマ”

「酒を飲んだり、不倫するのが“男らしい”と思ってた」53歳の元公務員、準強制性交容疑で語られた「2人の愛人」と「ED治療」

2021/02/13 17:30
オカヂマカオリ(ライター)
「東京高等地方簡易裁判所合同庁舎」Wikipediaより

殺人、暴行、わいせつ、薬物、窃盗……毎日毎日、事件がセンセーショナルに報じられる中、大きな話題になるわけでもなく、犯した罪をひっそりと裁かれていく人たちがいます。彼らは一体、どうして罪を犯してしまったのか。これからの生活で、どうやって罪を償っていくのか。傍聴席に座り、静かに(時に荒々しく)語られる被告の言葉に耳を傾けると、“人生”という名のドラマが見えてきます――。

【#013号法廷】
罪状:準強制性交等
被告人:Y男(53歳)

<事件の概要>

 前職場の同僚たちとの酒宴から帰る途中、終電間際の山手線車内で、やはり飲酒のため酩酊状態の被害女性(親子ほど年が離れている)を見つけた被告・Y男は、S駅で彼女を抱き抱えて下車。共にタクシーに乗り込み、車内で被害者の乳房を揉んだ。その後、下車したアパートの敷地内で強姦した容疑。

 Y男はタクシー内でのわいせつ行為は認めたが、その先は「記憶にない」と否認。弁護士によれば「被告はお酒を飲むと勃起しません」とのことだが……。

酒を飲むと記憶が飛ぶのに、自制しなかった「バカな」理由

 証人として出廷した被害者女性に、まずは敬意を表したいと思います。Y男の弁護士が「(被告の)陰茎は見てないですよね?」「酒を飲んで(強姦されたと)勘違いしたということは?」などセカンドレイプまがいの下劣な質問をしても、取り乱すことなくきちんと答えていた彼女。いち傍聴人にすぎない筆者でさえ、「午前2時の暗がりで、チ○コが見えるかバーカ!」「科捜研立ち合いの下で診察を受けて、医学的証拠があるのに、それを信じないとは何事か〜!」と、心の中で激怒するほどだったので、さぞおつらかったことでしょう。本当にお疲れ様でした。

 さて、被告・Y男には、もともと公務員だったものの、2015年に飲酒による同僚への暴行で懲戒処分を受けて退職するという、“前歴”がありました。現在も酒を飲み過ぎると「2回に1回は記憶が飛ぶことがある」とのこと。

 検察の「(飲酒を)自制しようと思わなかったのですか?」という質問には、「もっと(酒に)強くなろうと、飲んでも飲まれないようになろうという、バカな考えがありました」と答えるあたりに、妙な“マッチョイズム”の香りがしました。

 訓練が必要かつ、上下関係が厳しそうな職場に50歳までいたと聞き、「“男らしさ”という呪い」との言葉がふと浮かびます。この後の被告人質問で来歴を知ると、まさに予想通りだったことが判明するわけですが……。

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