伊東美和氏インタビュー

『君と世界が終わる日に』は、『ウォーキング・デッド』の劣化コピーに? ゾンビ映画ウォッチャーが「しょぼい理由」を考察

2021/01/31 16:00
サイゾーウーマン編集部
『君と世界が終わる日に』(日本テレビ系)公式サイトより

 “日本の地上波ゴールデン初のゾンビドラマ”と銘打たれた連続ドラマ『君と世界が終わる日に』(日本テレビ系、以下『キミセカ』)が、1月17日にスタートした。

 同ドラマの主人公は、自動車整備工・間宮響(竹内涼真)。研修医である恋人・小笠原来美(中条あやみ)にプロポーズしようと決意した日、響はトンネル崩壊事故に遭ってしまう。数日後、なんとか脱出することに成功したが、そこには、ゾンビのような化け物に占領されて、人けのなくなった街が広がっていた。響は来美を捜す中で、ほかの生存者たちと合流し、生き延びるためにゾンビと戦うことになる……というストーリーだ。

 日本の連続ドラマでは珍しいゾンビモノだけに、さぞ視聴者も熱狂しているかと思いきや、第1話終了後の評判は残念ながらいまいち。というのも、世界的大ヒットの米ドラマ『ウォーキング・デッド』シリーズ(2010年〜)や、韓国映画『新感染 ファイナル・エクスプレス』(16年)と比較され、「しょぼい」「迫力がない」と物議を醸してしまったのだ。

 『キミセカ』のゾンビが、「しょぼい」といわれてしまう理由とは? また作品としての評価は? 今回、『ゾンビ映画大事典』(洋泉社)の著者であるゾンビ映画ウォッチャー・伊東美和さんに第1話を見ていただき、率直な意見をお聞きした。
(※取材日は1月22日)

感染症イメージのゾンビメイクは「頑張っている」

 『ウォーキング・デッド』でゾンビブームが巻き起こって早10年。幅広い層にゾンビ作品が親しまれるようになったものの、日本の地上波ゴールデン・プライム帯のドラマに、ゾンビが堂々と登場するのは異例といえるだろう。『キミセカ』は、伊東さんのお眼鏡にかなったのだろうか。


「昨今、テレビで残酷描写が放送されなくなっている中、本作は地上波ドラマの割に、ギリギリのラインを攻めているのではないかと感じました。例えば、整備工場で、響の同僚の体を鉄の棒が貫くというシーンは、現在のドラマではまずやらないのではないでしょうか。また、高校時代に弓道部に所属していた響は、弓矢でゾンビと戦い、具体的に“頭部に弓が刺さっている”描写もありましたが、これもなかなか見ないですよね」

 加えて伊東氏は、一部視聴者の間で「迫力がない」と不評を買っていたゾンビのメイクにも、「頑張っていると思います」と見解を述べる。

「確かに、予算のかかった作品のゾンビと比べると安っぽく見えるでしょうが、低予算だと顔や体を白く塗るだけで終わってしまうケースもある中、ちゃんとゾンビっぽい汚れたメイクをしているなと思いました。メイクの特徴としては、死者が蘇ったというより、感染症のイメージで作られている点で、映画『28日後…』(02年)の系譜でしょう。また、ゾンビ発生直後という設定なので、腐敗したメイクではないというのも特徴。『ウォーキング・デッド』は、ゾンビになってからの“時間経過”を冷静に考えて作られているので、古いゾンビに関しては、腐乱したり、ミイラみたいなメイクが施されているのですが、それとは異なりますね」

 視聴者評とは反対に、意外や意外、ゾンビ映画ウォッチャーには高評価……と思いきや、伊東氏は、「ゾンビモノとして面白いかと聞かれると話は別」ときっぱり述べた。

新品本/ゾンビ論 伊東美和/著 山崎圭司/著 中原昌也/著