「おれ自殺します」と通報を阻止! アダルトグッズ大量万引きの高1男子、バッグに隠された“もう一つの疑惑”
店長からの見えない圧力が気になって、お昼休憩すらいただかないまま警戒を続けていると、午後4時を過ぎたところで、ようやくに強めの不審者が現れます。どことなく霜降り明星のせいやさんに似ている学校帰りと思しきブレザー姿の男子高校生が、おれに近寄るなといった雰囲気をまといながら入店してきたのです。右肩には、ナイロン製の大きなスポーツバッグが提げられており、そのチャックは半分ほど開いた状態にあることも確認できました。万引き犯が見せる典型的なサインを前に、実行に至ることを確信しつつ、その動向を注視します。
すると、衛生用品売場の前に足を止めたせいやくんは、その場にバッグを下ろして股の間に挟む形でしゃがみこむと、卵パックの形状をした商品を棚から手に取り、そのままバッグの中に隠してしまいました。その後も周囲を窺いながら、なにかシャンプーのようなものを数点と、パッケージに「0.01」と書かれた男性用避妊具を数箱続けてバッグに隠すと、チャックを閉めて肩にかけ、足早に売場を立ち去っていきます。時間でいえば、2分弱といったところでしょうか。手際の良い犯行に驚愕しつつも、気付かれぬように後を追い、何度も振り返りながら店の外に出たせいやくんに声をかけました。
「こんにちは、お店の者です」
「はい? なんですか?」
「なんですかって、なんで声かけられたか、わかるでしょう?」
「あ、いや、……はい、ごめんなさい」
ずっと惚けていたい様子でしたが、逃走を図ることなく事務所への動向に応じてくれたせいやくんに、盗んだ理由を聞いてみます。
「どうして盗っちゃったの?」
「ちょっと恐かったし、恥ずかしかったから……」
「え? どういうこと?」
「…………」
なぜか黙り込んでしまったので、無理に尋ねることなく、事務所まで連れて行きます。事務所に到着して、盗んだ商品を応接テーブルに出してもらうと、計8点の商品が出てきました。どれも見たことのない商品ばかりで値段はわかりませんが、200円ほどしか持っていないというので、商品の買い取りはできそうにありません。身分を確認させてもらえば、近くにある県立高校の1年生で、ここから電車で30分くらいかかるところに家族と暮らしていると話しています。両親とも働きに出ており、帰宅されるのは夜遅くだそうで、商品代金の支払いや身柄の引き受けに時間がかかることに違いありません。今日も残業かと意気消沈しながら、必要事項の聴取を終えてまもなく、額に青筋を立てた店長が鬼の形相で事務所に入ってきました。
「え? こんなにたくさん盗ったの?」
「はい。所持金も少なくて、買い取れそうにないんですけど、どうされますか?」
テーブルに並べられた商品群を見て、汚物を見るかの如く顔をしかめた店長が、せいやくんに言いました。
「こんなにたくさん、全部自分で使うつもりだったの?」
「いや、友達にもあげたかったから」
店長によれば、せいやくんが盗んだモノの一部はアダルトグッズで、販売時に年齢確認が必要となる商品ということでした。恐くて恥ずかしいと話していたのは、このことを言っていたのでしょう。色や形によって中身が違うらしく、さまざまなタイプの商品を万遍なく盗んでいるところをみれば、友達にあげるという弁解も疑わしく思えてきます。