「緊急避妊薬の薬局販売」“否定派”の背景にあるもの―― 産婦人科医師の間でも意見が分かれる理由とは?
緊急避妊薬の市販化が2017年の厚生労働省での検討会で否決されたのを受けて、「緊急避妊薬を薬局でプロジェクト」のメンバーは、18年からオンラインでの署名集めを開始した。
「今年の7月22日に6万7,000筆の、そして新政権が発足後の10月27日には10万7,000筆の署名を厚労省に提出しています。7月の面談では性教育や薬剤師の研修などの土台が前提だと言われました。しかし、10月にはWHOの勧告についても触れられ『(女性の)当事者の心境や背景に配慮した議論を進めていきたい』という発言を聞くことができました」
さらに、活動を続ける中では、SRHRへの性別・年齢問わない関心の高まりを感じているともいう。
「多くの人が声を上げ、メディアでも取り上げられるようになりました。SNSで当事者が発信できる時代になった。みなさんと一緒に変えていけたら」
最後に、緊急避妊薬の薬局販売が実現した後は、どのような課題に取り組んでいきたいかを聞いた。
「長年、女性の健康や権利が、ないがしろにされてきたと考えざるを得ない状況だと思っています。自分の体について自分で決められる権利、特に、産まない権利や避妊の選択肢についての情報はとても少なく、隠されてきたとも感じています。緊急避妊薬の薬局販売の実現をSRHRの問題を解決するひとつの突破口にして、日本でまだ認可されていない避妊の選択肢の充実や、薬剤での安全な中絶などの議論を進めていきたいと思います」
緊急避妊薬の薬局販売は、あくまでスタート。性と生殖に関する健康と権利の保障の実現を目指す取り組みは、まだまだ続く。
(谷町邦子)
遠見才希子(えんみ・さきこ)
産婦人科専門医。聖マリアンナ医科大学医学部医学科在学中から、全国700校以上の中学・高校で、性教育の講演を行う。大学卒業後は亀田総合病院、湘南藤沢徳洲会病院などに勤務。現在は筑波大学大学院ヒューマン・ケア科学専攻社会精神保健学分野博士課程で、性暴力や人工妊娠中絶について研究している。