高橋ユキ【悪女の履歴書】

女詐欺師が語った「男性に愛されるための研究」と「男に可愛がられた私」の記憶【熊本:つなぎ融資の女王】

2020/12/20 18:00
高橋ユキ(傍聴人・フリーライター)

男に愛されるための研究

〈先生から叱られると、じいっと相手の目を見てまばたきせず、涙をつうっと一粒流す。ほとんどの先生は許してくれる。男性先生だけに通用する技だ。反比例するように女子や女性からは、どんどん嫌われていく。両親ですら父は私を以上に可愛がりいつも一緒だった〉

〈私は元来の美人ではないことを知っている。装いと誰にも負けない雰囲気づくり、表情、声、話し方、しぐさ、これらを細かく分析し、相手や場所に合わせてまるで一枚のパズル絵のように仕上げていく〉

 愛されるための研究を続け、そしてまた実際に男性に愛され続けて来た節子。38歳に見えるよう顔や胸の形を良くするヒアルロン酸注入施術も受けるなどしてきたが、拘置所で面会取材した記者の前でその面影は消え失せていた。黒のタートルネックと胸にリボンをあしらった青いショート丈のワンピースと、服装こそ若さを感じさせはするものの、三つ編みにしてまとめた髪は毛先の10センチほどだけが黒く、あとは真っ白だった。

 玉手箱を開けた浦島太郎のごとく、夢から醒めた節子が記者に語ったのは“身を隠していたときの生活”だった。このとき、九州の建設会社社長Aさんのもとに身を寄せ、たびたび援助をうけながら、その金で東京に飛び、ホストクラブに足繁く通っていたのだという。お目当は歌舞伎町のホスト、Bだった。

「行き詰まった現実から逃げたいという思いもありました。そんなときに思い出したのが、華やかな生活を送っていた数年前に一度だけ会ったことのある歌舞伎町のホストBのことでした。一度思い出したら、いてもたってもいられなくなり、Aさんに“東京でどうしても進めなければならない仕事がある”と説明したところ、500万円の現金を渡してくれました。それを持ってBに会いに行ったんです。もらった500万は2日くらいで使い切りました(笑)」


 このサイクルを繰り返していたが、そんな生活は長くは続かない。

エリカ38