コラム
“中学受験”に見る親と子の姿
難関私立中に合格したのに、“中堅大学”に進学……4浪の息子は「中学受験の燃え尽き症候群」だった
2020/11/15 16:00
“親子の受験”といわれる中学受験。思春期に差し掛かった子どもと親が二人三脚で挑む受験は、さまざまなすったもんだもあり、一筋縄ではいかないらしい。中学受験から見えてくる親子関係を、『偏差値30からの中学受験シリーズ』(学研)などの著書で知られ、長年中学受験を取材し続けてきた鳥居りんこ氏がつづる。
長年中学受験の取材をしている筆者のところには、頻繁に中学受験関連のお悩み相談が入るが、その送り主は受験前の保護者ばかりではない。上は、現在30歳過ぎの元中学受験生の母親からというのも珍しくはないのが実情だ。
アラサー年齢の子を持つ母たちの悩みの多くは「子が自立しない」ということである。もちろん、一人ひとり事情や背景が違うので、明確な解決策など、あろうはずもない。
しかし、母たちと話をしていくうちに、ある共通点のようなものを見つけた。それは「燃え尽き症候群」。
中学受験は小学生が経験するものなのだが、この勉強量ははっきり言って、大人でも音を上げるのではないかといえるほど大量で、しかも難しい。たいていの場合、6年生の1年間は土日もないことが普通だ。
親の中には「この道で本当にいいの?」と疑いながらも、途中リタイヤという道も選べず、子どもの横にキッチリと張り付いて、こう言い聞かせる人がいる。
「(有名)中学に入れば、遊べるから! つらいのは今だけよ!」
幸か不幸か、子どもはこれを信じて、頑張り抜き、無事に目標とする難関校に入学するのである。
親も子も“やれやれ”といった具合だろう。「これで一生、遊んで暮らせる」くらいの感覚になりやすいのだが、そこに落とし穴が隠されていることには、当事者ほど気が付きにくいものなのかもしれない。