コラム
仁科友里「女のための有名人深読み週報」

「おばちゃん復権ツイート」の投稿者と相席スタート・山崎ケイ……共通する“ジェンダーへの無理解”

2020/10/22 21:00
仁科友里(ライター)

 「ちょうどいいブス」を封印した山崎は、「いい女キャラ」を掲げている。あえて「自分を上げる」ことで、おかしさを誘うのかもしれないが、これまた炎上のリスクの高いキャラではないだろうか。

 山崎は10月15日にオンラインの番組『映画もアートもその他もぜ~んぶ喋らせろ!』に出演し、司会の次長課長・河本準一に結婚について聞かれると、「証明されたってことですよね、やっぱりいい女だって」とコメントした。「いい女」キャラを全うしての発言だろうが、テレビでこの発言をしたら、それこそ燃えるのではないだろうか?

 結婚というのは、転職と同じように人生の選択肢の一つにすぎない。したい人はすればいいし、したくない人はしなくてよい。にもかかわらず、女性誌が多くのページを割いて特集を組んできたのは、そこに「特別な意味」があるからだろう。

 それが何かをはっきりと言語化したのが、2003年に発売された酒井順子の『負け犬の遠吠え』(講談社文庫)だと思う。当時、独身の30代だった酒井は「どんなに美人で仕事ができても、30代以上・未婚・子ナシは『女の負け犬』なのです」と綴った。酒井は自身もそのグループに所属していることから自虐的に書いたつもりだったようだが、「30代以上で結婚していなくて子どものいない女は、負け犬と呼んでいい」というように、言葉が勝手に独り歩きを始めた。結婚していないくらいで“負け”という評価を押しつけられたくないと怒る読者は多数いて、当然、酒井も批判にさらされた。

 結婚したことを「いい女の証明」と言う山崎発言も、同様のリスクをはらんでいるのではないだろうか。結婚という個人の自由に、「いい女だから」という評価をからめると、「じゃ、結婚してない女は、いい女じゃないってことか?」と取る人がいないとも限らない。

 今年7月2日の本連載でも述べた通り、山崎はセクハラに気をつけているようで、結果的にセクハラを悪質化させる態度を取ってしまうところがある。思考回路の軸が「男性によく思われること」で固まっていて、ジェンダーに気が回らないのかもしれない。かといって、炎上も避けたいだろう。

 となると、山崎は媒体とネタを選ぶ必要があるのではないだろうか。山崎のファンしかいない場所、ネットニュースにならない場所でいつも通りのキャラで行き、そうでない場所では無難にやり過ごす。そのあたりを山崎の周囲がうまーくサポートできるかどうかが、今後の活動に重要となるのかもしれない。もちろんジェンダーへの理解を深め、それをネタに反映できることが一番いいことではあるのだが……。

仁科友里(ライター)

1974年生まれ、フリーライター。2006年、自身のOL体験を元にしたエッセイ『もさ子の女たるもの』(宙出版)でデビュー。現在は、芸能人にまつわるコラムを週刊誌などで執筆中。気になるタレントは小島慶子。著書に『間違いだらけの婚活にサヨナラ!』(主婦と生活社)、『確実にモテる 世界一シンプルなホメる技術』(アスペクト)。

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最終更新:2020/10/22 21:00
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