仁科友里「女のための有名人深読み週報」

マツコ・デラックス、「ポテサラ事件」へのズレたコメント……「高齢男性と変わらない」と感じたワケ

2020/07/16 21:00
仁科友里(ライター)
芸能界の大物となったマツコ・デラックス

羨望、嫉妬、嫌悪、共感、慈愛――私たちの心のどこかを刺激する人気芸能人たち。ライター・仁科友里が、そんな有名人の発言にくすぐられる“女心の深層”を暴きます。

<今回の有名人>
「ちょっと話し相手になってあげる」マツコ・デラックス
『5時に夢中!』(TOKYO MX、7月13日)

 Twitter発、「ポテサラ事件」をご存じだろうか。

 スーパーのお惣菜コーナーで、子どもを連れた女性がポテトサラダに手を伸ばしたところ、見ず知らずの高齢男性に「母親ならポテトサラダくらい作ったらどうだ」と話しかけられている様子を目撃したという投稿者。咄嗟に娘を連れ、その女性の目の前で、「大丈夫ですよ」と念じながらポテトサラダを2パック購入したという。この一連の出来事をまとめたツイートは13.3万リツイートされ、「毎日新聞」でも取り上げられるなど、話題を呼んだ。

 7月13日放送『5時に夢中!』(TOKYO MX)でもこの話題を取り上げたが、マツコ・デラックスの発言に引っかかるものがあった。


 知り合いでもない女性に、「母親ならポテトサラダくらい作ったらどうだ」と説教してくる高齢男性に対し、マツコは「もちろん、とんでもない話」と断ったうえで、以下のように続けた。「この話を聞いてまず想像しちゃったのが、その高齢の男性がさ、一人暮らしで、あんまり普段人との会話もなく、もともと性格にも難がある」とポテサラじいさんをプロファイルし、「そういうふうに言われた時に『ああ、すいません、今日は忙しいんで、ついつい買っちゃったんですよね』ぐらいの感じで、コミュニケーションじゃないけど、済ましてあげてもいいんじゃないかな。そんなに目くじら立てないで、『ちょっと話し相手になってあげる』ぐらいに」とコメントした。

 同番組の月曜日のコメンテーターは、マツコと株式トレーダー・若林史江の二人だが、1児の母である若林は「母親として」の意見を言う可能性が高い。二人して同じ意見を言っても、番組的には単調になるので、あえてポテサラじいさん側の肩を持つような意見を述べてバランスを取った可能性は、ないとは言えないだろう。

 『5時に夢中!』と言えば、マツコがテレビデビューを果たした記念すべき番組である。駆け出しの頃なら、大声で「じじい、うるせ~ぞ! このやろう」と毒を吐いたかもしれない。しかし、今やマツコは芸能界屈指の売れっ子となり、発言力は増している。そういう影響力のある人が、敬うべき存在であるお年寄りをこてんぱんに悪く言ってしまうとよろしくないと配慮したのかもしれない。

 番組のバランスを取ること、またタレントしての立ち位置を考えれば、賢いコメントだったと思う。しかし、マツコのアドバイス通りにしたところで、見ず知らずの女性に「料理を作れ」と命じるポテサラじいさんがいなくなるとは思えず、むしろ増えるのではないかとすら思う。

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