コラム
仁科友里「女のための有名人深読み週報」

「おばちゃん復権ツイート」の投稿者と相席スタート・山崎ケイ……共通する“ジェンダーへの無理解”

2020/10/22 21:00
仁科友里(ライター)
相席スタート公式プロフィールより

羨望、嫉妬、嫌悪、共感、慈愛――私たちの心のどこかを刺激する人気芸能人たち。ライター・仁科友里が、そんな有名人の発言にくすぐられる“女心の深層”を暴きます。

<今回の有名人>
「また炎上の火種になりかねないかなと思って」相席スタート・山崎ケイ
(YouTubeチャンネル「相席YouTube」、10月14日)

 Twitterで、妻子ある研究者の男性による「おばちゃん復権ツイート」が燃えていたのをご存じだろうか。問題のツイートは複数にわたっているが、端的にまとめると、

「独身男性に世間が向ける目は厳しい。若い女性に警戒されるかもしれないと気を使ってしまうし、男性と群れていると「男が好きなのか」と言われる。そんな彼らを救うのがおばちゃんの存在。異性として意識することはないけれども、女性的な視線を持ち、独身男性をあれこれ気遣ってくれる。おばちゃんが絶滅したことで、社会の潤滑油がなくなって、日本社会はぎすぎすしてしまった。日本社会におばちゃんを取り戻す努力を!」

というような内容だった。そして投稿者男性は、これらのツイートを「おばちゃんの復権」というタイトルをつけて、ツイートまとめツール「Togetter」に投稿したのだ。

 なぜおばちゃんが、見返りのない独身男性のお世話をしなければならないのか。投稿者男性の脳内には「女性はお世話をする性」という決めつけが潜んでいないかなどの理由で、このツイートは燃えた。

 個人的に付け加えさせてもらうと、私は「おばちゃん復権」という言葉の、“復権”が気になった。国語辞典を引くと、復権とは「一度失った権利などを回復すること」「停止された資格を回復させること」とある。絶滅したおばちゃんの“復活”を望むというニュアンスで使用したのかもしれないが、あえて“復権”を使ったのは、つまり、この投稿者男性は、おばちゃんを「ある権利を失った存在」として見ているのではないか。それでは、おばちゃんがもともと持っていたものの、失った権利とは何か。

 それが私の意訳したツイート内容にある「異性として意識することはない」ことに隠されていると思う。おばちゃんはかつて若い頃、性的な魅力を持ち、男性に求められることで社会に存在する権利を持っていたが、性的な魅力を失ったおばちゃんにはその権利がない。けれども、独身男性のお世話を無償でして社会の潤滑油になるのなら、その権利をもう一度与えてやってもよい……と、心のどこかで考えていたから、“復権”という言葉を使ったのでははないだろうか。

 投稿者男性はTwitterで「友人の女性から『女性は男性に対して感情労働をさせられ続けてつらい目にあってきた、なお求めるのか』というご批判だと解説してもらいました」と謝罪していた。素直に謝っている人に追い打ちをかけてなんだが、なぜ妻ではなく、友人の女性に解説してもらうのだろうか。「独身男性のため」と書いていたが、おばちゃんを必要としているのは、ほかならぬこの男性ではないかという気がしなくもない。

 頭の良い人とされているが、ジェンダー関係になると、不用意な発言をすることは珍しくない。それだけ女性蔑視が社会に浸透してしまっているからだと思うが、もしかしたら、ジェンダーは、理解するのに“センス”がいる事柄なのかもしれないとも思う。頑張って理解しようとしているつもりでも、どうもピンとこない人もいるだろう。そのうちの一人が、高学歴芸人である相席スタートの山崎ケイではないか。

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