サイゾーウーマンカルチャーブックレビュー『鬼滅の刃』27の名言を哲学専門家が解説! 仕事や家族関係に響くメッセージとは? カルチャー 『鬼滅の刃』27の名言を哲学専門家が解説! 仕事や家族関係に響くメッセージとは? 2020/10/09 15:00 ヨコシマリンコ 「『鬼滅の刃』に学ぶ絶望から立ち上がるための27の言葉」(笠倉出版社) コミックス累計発行部数が1億冊を突破し、社会現象と言ってもいいほどの大ブームを巻き起こしている大人気漫画『鬼滅の刃』(集英社)。漫画やアニメは見ていなくても、「名前は知っている」という方も多いのではないだろうか。かくいう私は、連載当初から『鬼滅の刃』目当てに「週刊少年ジャンプ」(同)を購入して愛読していた大ファンである。 『鬼滅の刃』は、大正時代を舞台に、炭を売って慎ましく暮らしていた主人公の炭治郎が、一家を「鬼」に惨殺され、唯一生き残った妹・禰豆子(※)は鬼にされてしまうという悲劇から始まる。その後、炭治郎は妹を元の姿に戻すため、そして鬼を滅ぼすために鬼殺隊(鬼狩り)という厳しい道へと進んでいく。 ※禰豆子の「禰」は「ネ+爾」が正しい表記 シリアスな設定ではあるものの、節々にコメディシーンも描かれており、“笑って泣ける漫画”に仕上がっているのも人気のポイント。しかし、何より特筆すべきは、個性豊かなキャラクターたちのセリフだ。『鬼滅の刃』は、現代の人々の胸を打つ名言が非常に多いのである。 そんな『鬼滅の刃』の「名言」に着目した本がある。「『鬼滅の刃』に学ぶ絶望から立ち上がるための27の言葉」(笠倉出版社)は、哲学の専門家である合田周平氏と、人生の歩み方に迷うライター・堀田孝之氏が、『鬼滅の刃』の名言を素材に、2人の対話形式で、その名言に秘められた哲学的メッセージに迫っている。 本書は「仕事や勉強から『逃げない』ための言葉」「家族や仲間と『絆を築く』ための言葉」「失敗や挫折から『立ち上がる』ための言葉」など、セッション1~5までに分けられており、27つの名言が取り上げられている。その中から、いくつかご紹介しよう。 <SESSION1 仕事や勉強から「逃げない」ための言葉> 「頑張れ炭治郎頑張れ!! 俺は今までよくやってきた!! 俺はできる奴だ!! そして今日も!! これからも!! 折れていても!! 俺が挫けることは絶対に無い!!」 (3巻24話 竈門炭治郎) 脚とあばらの骨を折りながら鬼と戦っていた炭治郎が、心まで折れそうなとき、自分を鼓舞するために放ったこの言葉。一見ただの強がりのようにも聞こえるが、合田氏いわく、「心を前向きにするのに、『自分で自分をほめる』ことが有効なのは脳科学の世界でも解明されている」のだという。さらに重要なポイントは、「自分に向けて大声で叫んでいる」ということ。実際に声に出すと、自己の聴覚が刺激されるため、より強く言葉が心に焼きつけられるのだという。 人間は、自ら考えたことや発した言葉に、知らず知らずのうちに無条件に同化してしまう性質があるらしく、炭治郎は言葉が持つ暗示力を利用して己を奮い立たせ、結果的に勝利をおさめることができた。炭治郎のように、追い込まれて心が折れそうなとき、声に出して自分を褒めてみるのもいいかもしれない。 <SESSION3 失敗や挫折から「立ち上がる」ための言葉> 「生殺与奪の権を他人に握らせるな!!」 (1巻1話 冨岡義勇) 鬼になった禰豆子を狩ろうとする鬼殺隊に対し、土下座して命乞いをする炭治郎に鬼狩りの剣士・義勇が放った言葉。第1話ということもあり、印象に残っている人も多いかもしれない。義勇は続けて、「鬼共がお前の意志や願いを尊重してくれると思うなよ」 「当然俺もお前を尊重しない それが現実だ」と厳しい言葉をかけるが、合田氏は「とはいえ、現実世界で、自分を傷つけるような人や、話の通じない、まさに『鬼』のような人と対峙したとき、やみくもに闘う必要はない」と説く。 『鬼滅の刃』では、努力や諦めない心、乗り越える力などが大切であると学ぶ場面が多いが、だからといって、「逃げたらダメ」というわけではない。重要なのは、「生殺与奪の権を他人に握らせない」こと。本心から「逃げたい」と思うのであれば、その判断は正しいということも、また教えてくれているのだという。 <SESSION4 「小さな幸せ」を見つけるための言葉> 「幸せかどうかは自分で決める 大切なのは“今”なんだよ」 (11巻92話 竈門禰豆子) 鬼と戦い気を失った炭治郎の脳裏に蘇った、過去の禰豆子の発言。貧しいことを謝る炭治郎に対して、「前を向こう」「一緒に頑張ろうよ」と兄を鼓舞した。“未来”は“今”の延長線上にある。「『今この瞬間幸せになる』という意思がなければ、未来でも幸せを感じることができない」と合田氏。確かに、何もしていないのに急に幸せが振ってくることは、ほぼない。運任せの宝くじでさえ、買わなければ当たらない。禰豆子や合田氏が言う通り、大切なのはまさに“今”なのだ、と気づかされる名言。 哲学書や自己啓発本は世にたくさんあるが、ここまで読みやすいものは珍しいだろう。『鬼滅の刃』ファンなら新たな魅力を発見することができるだろうし、読んだことがなくても本書を読めば作品が気になってしまうはず。人生がうまくいかない、でも何をどう変えればいいかわからないという人は、まずは本書を読んで心の持ち方から変えてみてはどうだろうか。 (ヨコシマリンコ) 「『鬼滅の刃』に学ぶ絶望から立ち上がるための27の言葉」(笠倉出版社) ※当記事はPRです 最終更新:2020/10/15 11:07 次の記事 嵐・二宮、蜷川幸雄に激怒された過去 >