「採点ミスを疑っています」「絶対おかしい」中学受験不合格を引きずる母が、涙ながらに訴えたこと
“親子の受験”といわれる中学受験。思春期に差し掛かった子どもと親が二人三脚で挑む受験は、さまざまなすったもんだもあり、一筋縄ではいかないらしい。中学受験から見えてくる親子関係を、『偏差値30からの中学受験シリーズ』(学研)などの著書で知られ、長年中学受験を取材し続けてきた鳥居りんこ氏がつづる。
中学受験は、その準備に、多大な時間と手間とお金がかかるものだ。子どもへの負荷も相当なものであるが、親にもそれと同じくらい、いや、おそらくそれ以上に重圧がかかっていることであろう。
それゆえ中学受験を「苦行」と捉える親も存在し、彼らはそれ相応の“結果というご褒美”を渇望している。しかし、哀しいかな、第1志望校に合格する子は今や、5人に一人とも言われるのが、中学受験の世界。当然のことながら、全員が万々歳という結果は望めないのだ。
たとえ不合格を突きつけられたとしても、じょじょに「人生はままならない」と達観し、次なる歩みを進めていく親子が多数派ではあるが、中には“ご褒美なし”という現実を引きずり続ける親もいる。
麻美さん(仮名)も、その一人であった。
彼女の一人息子である翔太君(仮名)は中学1年生。この春、H中学に入学した。しかし、麻美さんはいまだに心が晴れないと訴える。
「なんで、うちの子がH中学なんかに行かないといけないんでしょうか? 毎朝、翔太を見るたびに、『なんで、H中学の制服を着ているのかしら?』と思っちゃう自分がいるんですよ……」
小学4年生から大手中学受験塾に通い、S中学を目指して、日夜勉強に励んでいたという翔太君。6年生になると、志望校別特訓クラスにも通うようになり、「S中学合格!」の旗印のもと、仲間たちと共に気合を入れる日々だったそうだ。
ところが、結果は不合格。その志望校別特訓クラスでは、不合格者のほうが少なかったという。
「絶対、おかしいんですよ。翔太はいつも合格確率も80%以上を出していましたし、今でも学校側の採点ミスを疑っています。塾の先生が『翔太の不合格は考えられない』とまでおっしゃったくらいなんですよ!」
さらに続けて、彼女はこうまくし立てた。
「あり得ないんです! 翔太は3年間も塾でコツコツと頑張ってきたんですよ。それなのに、J君が受かって、翔太が残念だったなんて、絶対、おかしいです!」