TikTokで世界的ブーム再燃!? ネット時代の音楽ジャンル「Jersey club」――K-Pop・EXOの“キシキシ”音に注目
翌年の03年には、ボルチモアのレコード店員でたくさんのBmoreをニューアークへ紹介する橋渡し役になっていたBernie Rabinowitzが他界し、ボルチモアからニュージャージーへBmoreの供給が止まります。それでもニュージャージーのアーティストたちは自分たちのシーンを発展させていき、大学の進学などで音楽をやめるプロデューサーも出ますが、一方で大学に進学した人たちがカレッジ・パーティで自分たちの曲をかけ、パーティの終わりにその日にかけた曲が入ったミックスCDを客に渡し、徐々に大学のキャンパスなどでも人気が高まって行きます。
Bmoreが成功を収め、Myspaceという音楽やエンターテインメントを中心としたSNSを介してシーンの知名度が上がり、ジャンル名がニューアークを越えて広まったこともあり、05年にはジャンル名を「Brick City club」から「Jersey club」に変えます。楽曲はMyspaceやファイル共有ソフトのLimewireにアップロードされ、さらには無料のミックスCDとして配布され、さまざまな場所でJersey clubがプレイされどんどんと広まっていきます。
Jersey clubはもともとDJがマイクパフォーマンスすることが盛んなジャンルですが、この時期はダンスがシーンの中心になりつつあり、 パーティでかける曲に決まった振りで踊るよう、DJがオーディエンスにダンスを呼びかける文化ができました。DJ中に毎回ダンスムーブをコールすることが嫌になったTim Dollaは、手を振って膝に当てるように踊る「Swing dat」というダンスムーブから、「Swing dat sh*t」というフレーズが連呼される曲を作り、 大ヒットします。
以降、気に入ったトラックを聞いたダンサーが自分たちでダンスを発案し、曲にのせて踊る動画をネットに上げるようになり、トラックの知名度も高まりました。現在のTikTokで起こっているような現象ですが、これが08年頃すでに行われていました。
■DJ Sliink – Get Da Patty Cake Goin’
■DJ TIM DOLLA – SWING DAT SHYT
BPMが上がり歌モノサンプリングなど独創的に変化
その後Hot97やPower105などのHiphopやR&BをかけるNYのラジオ局や、NYのクラブなどでもJersey clubがプレイされるなど、ニュージャージー以外でもJersey clubが注目され始めます。Jersey clubのスタイルもBPMが135ぐらいまで上昇し、半分のテンポ(BPM68程度、R&BによくあるBPM)でのボーカルサンプリングが取り入れられ、使う音ネタも変わっていき、BmoreやPhillyとは全く違った独創的なものになっていきます。
先述したBed squeak soundは04年にリリースされたTrillvilleの「Some Cut」が主にサンプリングされ、昨今Jersey clubだけでなくたくさんの曲に使われています。
2010年代に入るとニューアークでのリリースも活発ながらも、DJ SliinkがDJ兼プロデューサーのDiploが主催するMad Decentというレーベルと組んだり、ノルウェーのプロデューサーCashmere CatがJersey club楽曲をSoundcloudで発表したり、フランスのDJがミックステープでJersey clubを紹介したりと段々と世界中に広まっていきます。
■DJ Sliink – Mad Decent Block Party (2013)
■CASHMERE CAT – Mirror Maru (2012)
恐らくこのぐらいの時期からハウスやR&Bが原曲の曲がRemixされるようになり、さらにJersey clubの幅が広がります。ドンドン ドッドッドッというリズムのビート、歌モノのボーカル、チョップされたボーカルサンプル、Bed squeak soundなど現在Jersey clubといわれて想像する楽曲はこの辺りから始まっているといえるでしょう。
以下は93年にアメリカでリリースされたHouseのアンセム曲といわれているRobin Sの「Show Me Love」という曲をサンプリングしています。
■DJ JayHood (ft DJ Mike Gip) – Show Me Love (Jersey Club Remix) (2012)
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