コラム
老いゆく親と、どう向き合う?

認知症の父は「まったく怒らず、子どものよう」だと語る娘……「ムカつくけど一緒に過ごす」と決めた思い

2020/10/04 18:00
坂口鈴香(ライター)

“「ヨロヨロ」と生き、「ドタリ」と倒れ、誰かの世話になって生き続ける”
――『百まで生きる覚悟』春日キスヨ(光文社)

 そんな「ヨロヨロ・ドタリ」期を迎えた老親と、家族はどう向き合っていくのか考えるシリーズ。

 三井麻美さん(仮名・31)は高校生のときに、まだ52歳だった父、義徳さん(仮名)が若年性アルツハイマー病と診断された。徘徊して毎回警察のお世話になり、警察からもご近所からも怒られる。自治体に相談しても解決法は示されず、義徳さんを受け入れてくれる施設も見つからなかった。

(前回:父が行方不明になって警察へーー「今どこにいるかわからない」逆探知でようやく見つけた姿は……

いつか私のことも忘れられてしまう

hooomeさんによる写真ACからの写真

 義徳さんの徘徊で大変な思いをしながらも、7年も在宅介護ができたのは、義徳さんが穏やかだったからだと顧みる。

「もともと、怒りっぽい人ではありませんでした。最初のころは病院から処方された、病気の進行を遅らせる薬を飲んでいましたが、飲むと急にキレてモノに当たるようになり、飲ませるのをやめたのです。それからはまったく怒ることもなく、身体レベルも落ちず、穏やかで子どものよう。家族のこともわかっていました。問題が起きると、家族で『こんなことがあった』と話したり、父のことを知っている友人に話を聞いてもらったりしたので、ストレスをため込むこともありませんでした」

 病気だとわかるまでは、「またおかしなことを言ってる」「なんでこんなこともできないの?」と義徳さんを責めたり、顔も見たくないと思ったりしたこともあった。

「でも、病気とわかってからは、話が通じなくてイライラすることはあっても、いつか私のことも、家族のことも忘れてしまうという思いがずっと心にあり、少しでも思い出に残ることをしたいと考えるようになったんです。だからムカつくけど、海に行ったり、ドライブしたりして、父と一緒に過ごすようにしていたんだと思います」

 当時の携帯には、変顔をする義徳さんの写真がたくさん残っている。

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