老いゆく親と、どう向き合う?

父が行方不明になって警察へーー「今どこにいるかわからない」逆探知でようやく見つけた姿は……

2020/09/27 18:00
坂口鈴香(ライター)

“「ヨロヨロ」と生き、「ドタリ」と倒れ、誰かの世話になって生き続ける”――『百まで生きる覚悟』春日キスヨ(光文社)

 そんな「ヨロヨロ・ドタリ」期を迎えた老親と、家族はどう向き合っていくのか考えるシリーズ。三井麻美さん(仮名・31)は高校生のときに、まだ52歳だった父、義徳さん(仮名)が若年性アルツハイマー病と診断された。義徳さんは仕事を辞めたものの、デイサービスを断られ、家族が仕事でいなくなる日中は一人で過ごしていた。

(前回はこちら:認知症になった52歳の父、東日本大震災で避難所生活に

行方不明になって警察のお世話になる

ぺるみけさんによる写真ACからの写真

 麻美さんの話を聞くと、義徳さんは認知症になってより活動的になっているように思われた。実際、麻美さん家族が在宅介護中もっとも大変だったのが、義徳さんの徘徊だった。

 日中は義徳さんが一人だったため、余計に家族の苦労は増した。


「家に帰れなくなって、探しに行っても見つからなくて捜索願を出したり、知らないご近所の家に行って、110番通報されたり……と、毎回警察のお世話になっていました。匿名の電話があって、『ちゃんと面倒をみろ!』『アルツハイマー病? そんなの知らん!』と怒鳴られることもありました。母は警察からもご近所からも叱られていました」

 冬のある日。午後から降り積もる雪のなか、麻美さんが帰宅すると、義徳さんはまだ帰っていなかった。

「携帯に電話すると、『今どこにいるかわからない』と言っていました。日も暮れているし、暗くなったら探せないと思って、警察に捜索願を出しました。私も父が行きそうな場所を探しましたが、見つかりません。最後は、警察に電話番号から逆探知してもらって、GPSを使って位置を特定して、ようやく見つけることができました。見つかったとき、同じ場所を行ったり来たりしていたそうです。帰ってきたときには、寒さで顔が真っ赤になっていました。携帯を持っていなかったらどうなっていたかと、怖くなりました」

お父さんは認知症 父と娘の事件簿 田中亜紀子/著