『ザ・ノンフィクション』レビュー

『ザ・ノンフィクション』支援者を“裏切る”犯罪加害者の心情とは「あの日 妹を殺されて 前編 ~罪を憎む男が選んだ道~」

2020/09/28 19:39
石徹白未亜(ライター)

日曜昼のドキュメント『ザ・ノンフィクション』(フジテレビ系)。9月27日は「あの日 妹を殺されて 前編 ~罪を憎む男が選んだ道~」」というテーマで放送された。

『ザ・ノンフィクション』(フジテレビ系)公式サイトより

あらすじ

 新大阪駅のほど近くにあるカンサイ建装工業。社長の草刈健太郎は犯罪加害者支援として企業7社と日本財団が2013年に開始した「職親プロジェクト」に関わっており、草刈自ら、面接のため全国の刑務所や少年院を月に一度訪ねる日々を送る。「雇ってみなわからへん」と基本、断らずに全員採用。ただし、身元を引き受けたあとすぐ姿を消されてしまうことも多いという。早く出所するために利用されたのだ。

 裏切られることも多い加害者支援を草刈が続けるのには理由がある。2005年、草刈は7歳下の妹の福子さんをアメリカで殺害され喪った。犯人は福子さんが現地で結婚した夫だった。犯罪被害者を減らすには、まず加害者を減らすことが大事であり、「妹に『やれ』って言われてる気がする」と草刈は加害者支援を続ける。

 同社では7年間で18人の犯罪加害者を雇い、今3人が働いているという。そのうちのスグルは元窃盗犯だったため、マンションの大規模修繕工事において、競合会社がマンション住民に窃盗の元受刑者がいることを言いふらし、6億の受注を逃すこともあったという。スグルは草刈のことを「神様みたいな感じ」と話し、仕事の幅を広げようと国家資格、一級塗装技能士の勉強に励んでいる。

 同社の社員寮の寮長であるコウスケは米国の名門、コーネル大学を卒業し、その後は大手商社で年収2000万を稼いでいた超エリートだったが、覚醒剤の使用と所持で懲役2年、執行猶予4年の判決を受ける。草刈のことを知りメールを送り、今は同社の営業として働くだけでなく、恩返しをしたいと、寮長として寮に閉じこもる後輩がいたら声をかけていきたいと話す。


 一方で一時期同社で働き、その後自立するからと会社を辞めた22歳のタケオは、特殊詐欺グループの活動に加担してしまったことを、草刈に告白する。草刈はタケオが出頭するのに付き添い、その後番組スタッフに「草刈アホちゃうか、甘やかしすぎちゃうかと(言われるかもしれないが)、誰かやらんとね。キツく言うて逃げてしまったらまたアカンわけやし」と話した。なお、番組内で紹介された法務省「犯罪白書」によると、犯罪自体は減少傾向だが、再犯率は増加傾向にあり、2019年度は過去最悪の48.8%だという。

人を信じるということ/島田裕巳