「中学受験をやめる」小6秋の模試で、合格確率が80%超→20%に暴落……“コツコツ型”の娘が白旗をあげた日
“親子の受験”といわれる中学受験。思春期に差し掛かった子どもと親が二人三脚で挑む受験は、さまざまなすったもんだもあり、一筋縄ではいかないらしい。中学受験から見えてくる親子関係を、『偏差値30からの中学受験シリーズ』(学研)などの著書で知られ、長年中学受験を取材し続けてきた鳥居りんこ氏がつづる。
中学受験を目指す多くの小学6年生にとって、晩夏から秋の成績は“底”になる。それは朝から晩までの過酷な夏期講習が終了したことが大きい。この総まとめでもある夏期講習をもって、全ての単元を終え、これからは過去問などの実践演習に移るからである。
つまり、今までは模試を除いては、その週の単元を重点的に学習することに重きを置いてきたものの、実践演習の対象は全単元に広がりを見せるために、以前、解けていたはずの問題も忘却の彼方に追いやられ、解答できず。取ったこともないような低い点数を見て、自信を失くす子は多い。
美羽ちゃん(仮名)も、その一人であった。
美羽ちゃんは4年生の秋に行ったS学園の文化祭に魅せられ、以来、ずっとS学園を目指して、懸命に努力を重ねてきた。その甲斐あって、6年生の9月までは、S学園の合格確率が80%超。塾の先生も太鼓判を押すほど、合格が確実視される成績をキープし続けてきたのだ。
ところが、秋の模試で信じられないことが起こった。その合格確率が一気に20%まで下がってしまう。コンピューターが出した結論は「志望校の再考」。美羽ちゃんは自信を喪失し、泣き崩れた。
母の薫さん(仮名)がどう慰めようとも、部屋から一歩も出ず、塾も休むようになってしまったという。そして、ついに美羽ちゃんは、薫さんに「受験をやめる」と伝えたそうだ。
薫さんは、筆者に当時のことを振り返ってこう言った。
「美羽は、親の私が言うのもなんですが、真面目なコツコツ型で、本当に毎日、手抜きなしに頑張ってきたと思います。それなのに、1回の模試で今まで積み重ねてきたものが根こそぎ崩れてしまったようで、どうにも立ち直りませんでした……」
S学園は難関校であり、かつ大人気校なので、倍率も高い。美羽ちゃんと同じ塾に通う子たちの中にも、「S学園命」というほどに憧れを持って、日夜、頑張っている子が多いのだ。