コラム
仁科友里「女のための有名人深読み週報」

マツコ・デラックス、「ポテサラ事件」へのズレたコメント……「高齢男性と変わらない」と感じたワケ

2020/07/16 21:00
仁科友里(ライター)

 それにしても、今回のマツコは珍しくピントがズレたコメントをしていたように思う。

「料理を作ることの大変さっていうのはさ、もう包丁を持った瞬間から面倒くさいわけじゃない、火を使った途端に暑いわけじゃない」と言っていたが、「でも、それはどのメニューだって同じだと思うのよ」「ポテサラを作りたくないと思ってる人は、全部作りたくないのよ、本当は」「だから、三品あるんだったら、一品だけ作ることが重要な気がする」と結論づけていた。

 料理というのはすべからく面倒だから、全部を作るのではなく、一品だけ自分で作れ、というのは、忙しい現代女性に沿った現実的な提案かもしれない。しかし、ポテサラツイートの一番の問題点は、「母親であることを理由に、おかずをどう用意するかという個人的なことを、まったくの他人に、なぜとやかく言われなくてはいけないのか」ということではないだろうか。おかずを何品作って、何品手作りするかは、料理を作る人が決めることである。全部既製品でもいいし、全部手作りだっていい。「おかずが三品あるんだったら、一品だけ作ることが重要」というマツコの考え方は、結局「一品は作れ」と言っているわけだから、「こうしろ」と指図してくるポテサラじいさんと、そう変わらないのではないだろうか。

 日本の「料理は女性がすべき」「品数は多いほうがいい」という考え方が非常に強いように思う。そんな中、2016年に料理研究家・土井善晴センセイが『一汁一菜でよいという提案』(グラフィック社)を発表して話題を呼んだ。「料理はごはんとみそ汁だけでよい」というセンセイの提案は、料理が苦手な人、仕事が忙しくて品数多く作れない人など、多くの女性に好意的に迎えられた。

 その一方で、滅びないのが、婚活や夫婦問題の専門家たちの「胃袋をつかめ」作戦である。

 夫婦問題研究家の岡野あつこセンセイは、19年10月21日のオフィシャルブログで、夫の浮気に悩む女性に対して「お料理の腕をぐんと上げて、夫の胃袋をつかんでしまうのもいいかもしれませんよ」と書いている。18年放送の『Wの悲喜劇~日本一過激なオンナのニュース』(Abema TV)で、ラブヘルスカウンセラーの小室友里センセイは、夫から拒否されるタイプのセックスレスを回避するために「夕食のおかずを一品増やす」ことを挙げている。センセイ方のアドバイスはデータに裏打ちされたものだろうが、若い世代には「料理をしないと浮気される、セックスレスになる」と刷り込まれ、それが料理をしないことへの恐怖や罪悪感へとつながっていくのではないだろうか。

 話をマツコに戻そう。テレビに出たての頃は、キャビンアテンダントなど、「人が憧れるもの」を茶化して笑いに変えていたマツコ。しかし、大物となったマツコが特定の何かを貶めると炎上する可能性もある。なので今後は「女は料理」といった固定観念のようなものをターゲットにしたらどうだろうか。「まだ、そんなこと言ってんのか。いちいち、うるせーな!」というマツコ節を待っているのは、私だけではないはずだ。

仁科友里(ライター)

1974年生まれ、フリーライター。2006年、自身のOL体験を元にしたエッセイ『もさ子の女たるもの』(宙出版)でデビュー。現在は、芸能人にまつわるコラムを週刊誌などで執筆中。気になるタレントは小島慶子。著書に『間違いだらけの婚活にサヨナラ!』(主婦と生活社)、『確実にモテる 世界一シンプルなホメる技術』(アスペクト)。

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最終更新:2020/07/16 21:00
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